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実際のスピンアウト現象であるストールやベンチレーションを本隊とするなら、キャビテーションは先発隊。言い換えるなら、キャビテーションが激しいほどスピンアウトしやすいとも言える。 キャビテーションとは、フィンの側面に発生する気泡のことだ。翼断面を持つ物体が水中を高速で動くとき、その側面には気泡が発生する。そして気泡が多く発生するほど、スピンアウトしやすいだろうと想像に容易い。 この気泡は、水温に関係する。水温が(たしか)23度あたりのときに最も気泡が発生しやすく、水温がそれ以上でも以下でも気泡は減少する。すなわち水温が23度(それは相当温かい水温だ)のときに、もっともスピンアウトしやすい、と言えるのである。 こうした数値的な要素を別にしても、キャビテーションの発生率が水温によって異なるという事実を覚えておいて損はない。それは実際のセイリングにおいて、水温によってスピンアウトの度合いが異なる可能性がある、ということだ。すなわちある特定の水温でスピンアウトしたからと、そのフィンが根本的にダメだと結論づけるのは「早とちり」だし、また逆に、低い水温の冬場に良いと思っていたフィンが、実は夏場の温かい水温ではスピンアウトしやすいかもしれないということである。 さらにキャビテーションは、フィン表面によっても左右されると思われる。表面が傷だらけだとしたら、それだけでスピンアウトしやすくなる。また浅瀬に乗り上げたりしてフィン先端がギザギザだったら尚更。フィン先端のギザギザが引き金となるスピンアウトがキャビテーションと同一現象かどうかは定かでないが、実際のセイリングでは同類の引き金として足下から実感できる。水温によるキャビテーションは防げないにしても、こうした後天的な傷などの要素は、サンドペーパーで丹念に傷を修復するなどの方法で防げるのだから、労を惜しまずに心がけたいところだ。 こうしてキャビテーションをひとつの引き金として、スピンアウト本隊であるストールやベンチレーションが訪れる。 ストールとベンチレーションは、同じスピンアウトでありながらまったく異なる。ストールは回復可能で、ベンチレーションは回復不可能。だから今起こったスピンアウトがどちらなのか?で、その対処方法はまったく違うものになるのである。 |