連載コラム


ジャイブについて

いつもとは少し違った視点から考えてみるpart2

ここから先は、今一度ジャイブシークエンスの写真を見返しながら、各セクションごとに詳しく見てみよう。

セクション1

セクション1はここから先のジャイブにつながるアプローチ=ベアの場面。

アビームで走っていたとして、後ろ足をストラップから抜いて向こう側のレイルに置き、ハーネスを外して、板のノーズを風下へと向ける。

ここで大切なのは、レイルプレッシャーで向きを変えるのではなく、ただ単にベアという行為で向きを変えるという認識。その大前提を頭に入れた上で、では実際にそのアクションとは?

プレーニングでは体は風上側にハイクアウト(倒れ込んで)いる。すなわち体軸は風上側に傾いている。その体軸を、板の上に乗せる=板に真っすぐに立ち上がらせる、ことがジャイブにおける必須条件。

下の写真がまさにその場面。ハーネスラインを外し、今まさに後ろ足をストラップから抜いて向こう側のレイルに置こうとしている。ここではまだ体軸は風上側に倒れている。その体軸を起こし、板に垂直に立ち上がらせるためには、セイルに体を引っ張り上げてもらう。

それはウォータースタートの行為にとても似ている。ウォータースタートで水中にある体を持ち上げるのに欠かせない要素は「前の手は、前肘を少し伸ばすようにしてマストをより立てる=体から遠ざける」「後ろ手は、それまでよりもセイルを強く引き込む」の2つ。度合いこそ違え、ここでも同じ行為をする。すなわち、前の手で少しマストを押し出し、後ろの手でもっとセイルを引き込む。それは長い時間耐えなければならない行為とは違う。ウォータースタートがそうであるように、わずか数秒に満たない時間だけでいい。とにかく、寝た体が板の上に立ち上がればいいだけだ。

この行為がスムーズだと、それに連動してベアも自然と行える。前の手でマストを前にすれば、それはセイルをフォアレイキさせることになり、すなわちブームエンドがそれまでよりも上がるから板はベアする。同時に、セイルを強く引き込む行為もまたノーズをベア方向に向けるのに作用する。そうしてベアしながら、同時に体軸を板と垂直まで起こしたのが下の写真。

体軸が板の上に、垂直に立っているのがわかるだろう。また、2枚の写真を比べると、すでにこの時点で風下45度くらいまでは向きが変わっているのもわかる。

写真ではセイルが引き込めて見えているが、そこに注視する必要はない。ここでセイルが多少開いていても、この先にあるセクション2にはさほどの影響はないから(それが大切になるのはジャイブが当たり前に出来るようになって、さらに上級を求めるようになってからでも遅くない)、セイルの引き込みは一度忘れた方が、基礎となる大切なところを見失わないで練習できる。

ここで最も大切なのは、まだターンをまったくしていないということ。した行為は、アビームから風下45度に向けて、ただベアしただけ。ただし通常のベアとは、風上に倒れていた体軸を板の上に起こしたという違いがある。プレーニングのアビームからプレーニングのクォーターまでベアするときは体軸は風上側に倒れっぱなしだが、ジャイブにおけるベアでは体軸が風上に倒れた状態から板に乗る。その違いこそがジャイブを成功へと導く最大のアプローチ要素だ。

ちなみに下の写真。板が傾いて見えるため(動画で見たら余計に傾いて見える)、すでにレイルプレッシャーをかけていると解釈する人が多いが(だからこの時点で急いでレイルプレッシャーをかけると解釈してしまっている人が多いのかもしれない)、実際にこのとき乗り手は、レイルプレッシャーをかけている意識はさほどない。なのになぜ板が傾いて見えるかと言えば、それは後ろ足を向こう側のレイルに置いているから。向こう側のレイルにある後ろ足に半分重心が乗ってるから、勝手に板が少し傾いているというだけの話なのである。そこを勘違いしないように。

まとめてみよう。ハイクアウトした体を板に起き上がらせるために、マストを押し出してセイルをもっと引き込む。その行為は体を起き上がらせると同時に、板をベアさせるベクトルとしても働くから、体が起き上がりながら板もベアする。体が起き上がったとき、後ろ足が向こう側のレイルに乗っているから、何の意識も無く向こう側のレイルが少し沈み込み、それによってさらに板はベア方向へ向かおうとする。

しつこく繰り返すが、2枚目の写真でまだジャイブには入っていない。ただベアしただけだから、このあと何もしないと板はこのまま、ほぼ真っすぐ走り続ける。

ここまでで、まだジャイブは何も始まっていない。準備は整ったけど、ジャイブはまだこの先。そこに向けて、まずはここでひと呼吸。

ベアして、体軸が板に乗っていれば、あわてなくてもまだスピードは保たれる。車でいうならアクセルは離したけどブレーキは踏んでいない状態(体軸が板に乗っていなかったりベアが不十分だとそれはブレーキを踏んだことになる)。もう少しアクセルを踏み続けた方が良いことはたしかだが(それがセイルを引き込むとかの行為)、ブレーキを踏まない以上はまだ板は惰性で走り続ける。だからこそ、ここでひと呼吸してもジャイブに十分なスピードは保たれる。