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Q:O.Pさんからの質問 セイル(主にトップセクション)のチューニングについて。使用中のガストラ09年GTX6.5、7.5、8.5のトップセクションが、セイルカーブが確認できないほどフラットで、時に第2バテンは逆反りしてさえ見えます。これは、セイルカーブが無い=ドラフトが無い=セイルとして機能していない、ということと考え、バテンテンションを強めてみたのですが改善しません。どのようなチューニングが正しいのでしょうか。 |
A:セイルのドラフトカーブを作り出す役目のバテン。バテンによるそのドラフトカーブは、セイルのセクション(トップ,ミドル、ボトムの3セクション)ごとに特徴があります。レース系のセイルを例に見てみましょう。 7本バテンのセイルを見たとき、一番下のフットバテン(第7バテン/ボトムエリア)は、フットが巻き込んで見えるほどドラフトカーブが深く、ローエンドパワーと、風の強弱に関係なく一定のパワーを乗り手に与えてセイルのバランスを確保するためのセクションです。 ブームを挟んだ上下のバテン(第5-6バテン/ミドルエリア)は確固たるドラフトによって加速とスピードを生み出すためのメインセクション。 上3本のバテン(第1〜3バテン/トップエリア)はドラフトが無く、ツイストに伴ってリーチを「開かせる」セクション。そして第4バテンは、トップセクションとミドルセクションの間を取り持つため、浅いドラフトを持ちます。 質問内容でもあるこのトップセクション。なぜここにドラフトがあるとダメなのか?そこにはバテンの特性が深く関与しています。 |
この2枚の写真を重ね合わせたのが下の写真。風を受けて揚力が発生し、それに引っ張られてドラフトが深くなった反作用として、リーチ側が手前に動いたのがわかるでしょう。 これがバテンの持つ特性です。すなわちドラフトがあると、風を受けてリーチが閉じてしまうということ。トップセクションがリーチを開かせてツイストを促進したいことを考えれば、これでは逆効果。だからトップセクションにはドラフトが無いのです。 |
そこで、多くのレース系セイルのトップセクション(特に上2本)には、ただの棒状(もしくはチューブ状)のバテンが使われます。棒状のバテンにはまったくドラフトが存在せず(写真右上)、風を受けるとただリーチ側が(時として逆反りするほど)開くだけ(写真右下)。これがリーチのスムーズな開きを後押しするのです。 |
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チューブバテンと呼ばれる、テーパーバテンの後方に太いチューブが接続するバテンもあります(写真下)。チューブバテンはテーパーバテンと棒状バテンの両方の特性を持つバテンで、テーパーバテンよりもドラフトを前方にキープしやすく、リーチ付近は開きやすい(棒状バテンほどではないが)という特徴を持ちます。そのため、ドラフトの固定が命題で、しかもトップセクションのリーチ開閉に連動したリーチアクションを必要とするミドルセクションに、このチューブバテンは多用されます。
また(チューブから前のテーパー部がとても短いタイプが)トップセクションに使われることもあります。その場合、ドラフトはとても浅く、棒状バテンに限りなく近い性能として機能します。 ちなみにテーパーバテンはフットバテンとして使われることが多く、風を受けるほどフットを巻き込む作用をします。なぜフットがリーチのように開いてはいけないかというと、フットは飛行機の翼でいうところのボディーとの接続部であり、硬く形を変えずに接続する必要があるから。フットベルトでフットを引っ張り、さらにフットを強烈に巻き込ませてドラフトを深く固定するのもそのためです。 話を質問に戻しましょう。トップセクションのセイルカーブが無いのはセイルが機能していないわけではありません。セイルはトップ〜ミドル〜ボトムセクションが一体となって初めて機能します。トップセクションはその一部として、リーチを開かせてツイストを促進する役目を持ち、そこでは必ずしもドラフトが必要ではないからです。 こうしたセイルの基本を念頭にチューニングすることはとても大切。もし、トップセクションのバテンが逆反りするのを嫌ってダウンテンションを規定より緩めたとしたら、セイルのツイストが阻害されてセイル本来の性能が発揮できないかもしれません。またバテンテンションを強めてトップセクションの棒状バテンに無理矢理ドラフトを作り出したとしたら、それはせっかくのセイル性能を低下させてしまうかもしれません。 ただしこれは、カムの有る無しにかかわらず、スピードを重視したセイルでのこと。特にビギナー対応の初速性能重視(プレーニングのしやすさ重視)のフリーライドセイルや、アクション重視のフリースタイルやウェイブセイルでは、トップセクションにまでテーパーバテンを使い、意識的に浅いドラフトを持たせたセイルもあります。 |
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