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Q:H.Sさんからの質問 03モデルのガストラMATRIX6.0を中古で購入したのですが、バテンテンションがわかりません。 質問該当セイル以外にも、バテンテンションに関する疑問をよく受けるので総合的に解説したいと思います。 |
A:ご存じのように、現在のセイルのバテンテンションの調節方法はセイルごとに異なります。ニールはバテンエンドのネジで調節してバックルでロック、シマーはバテンエンドのネジをドライバーで調節、そしてそれ以外の多くは、質問のガストラも含めてバテンエンドのネジを付属の六角パーツにて調節します。この六角ネジの大きさ(太さ)はメーカー各々で、ノースとナッシュは同サイズですが、ガストラは一回り大きいので調節パーツの互換性はありません。 次にバテンテンションについて。リペアロフトに持ち込まれる関係上、数多くのセイルを目にする中で、概ねバテンテンションには2つの間違いパターンがあるようです。ノーカムセイルはテンション不足が多く、カムありレース系セイルはテンション過多が多いというパターン。そしてテンション不足の場合は、スリーブに近いところのラフパネルやバテンポケットにシワができるため、その山部分が擦り切れたりフィルムが割れてしまい、テンション過多の場合は、スリーブに近い部分のバテンポケット上下の境目のフィルムが千切れてしまいます。いずれもセイル寿命を著しく縮めてしまうので、正しいバテンテンションが必要です。 よくレースセイルで「できるだけバテンテンションをかける」という表現を勘違いして、力の限り強くテンションをかけてしまう人がいますが、「できるだけ強いテンション」を自分の力限界と解釈するのではなく、セイルが耐えられる限界のテンションと解釈すべきです。ただの布や薄いフィルムでできたセイルに人が限界の力を加えたら、セイルは耐えられずに壊れてしまうからです。 では適度なバテンテンションとは?そこにはノーカムセイルとカムセイルの違いもあるので、それを知っておくことも必要でしょう。 バテンテンションを徐々にかけていくと、最初はバテンポケットのシワが徐々になくなり、それと呼応してバテンポケット上下のパネル部のシワが徐々になくなって、パネルに「張り」ができます。アクション系ノーカムセイルの場合、このあたりが適量。これを越えてしまうとドラフトが深くパネルが「硬く」なってしまうので、走りが良くなる反面で、セイルを返したときの反動が強くなり、ウェイブやフリースタイルで必要なセイルのソフトさやルーズさが失われて使い勝手が悪くなってしまいます。(01年8月掲載バックナンバー「バテンテンション」参照) バテンポケットやパネルのシワがなくなてからさらにバテンにテンションをかけると、次にはセイルの裏側(セッティング時の下側)のバテンポケットが徐々に膨らんでいきます。ブームエンドを持ち上げてセイルの下側を覗き込みながら(チェックを怠らず)テンションを加え続けると、膨らんだバテンポケットがある時点でパンパンに、これ以上は膨らめないだろうと思えるところがあります。その限界の一歩手前が、フリーライドセイルやノーカムレースセイルなどの「走り系」ノーカムセイルの適正バテンテンション。ドラフトが深く固定され、パネル本体にも張りが出てセイル全面が硬くなるので、風効率が上がり、アンダーでの走り出しやオーバー対応能力が高まり、風パワーがすべて推進力に変換されるのでセイルの体感重量も軽く使いやすくなります。 カムレースセイルの場合は、さらに少しテンションを強めます。するとある時点を越えたところで、バテンポケット内でバテンが「S字」を描きはじめます。太くてS字を描きにくいチューブバテンの場合は、チューブより前の細い部分がS字を描き、バテンポケット内の中心に通っていたチューブ部が、ポケットの左右縁に寄りはじめるのでわかるでしょう。このS字を描くぎりぎりが限界のバテンテンション。これを越えてもテンションはかけられるのですが、ここがセイルフィルムが持ちこたえることの出来る「道具上のテンション限界点」なので、ここを越えるとセイルが痛み、破け、もしくはバテンが折れたりもします。 |
バテンはバテンポケット内の中心に真っ直ぐ位置するのが条件(左)。しかしテンション過多になると押され過ぎたバテンは行き場を失い、ポケット内で「S字」を描いて曲がってしまう(右)。 |
ただしセイルは使用回数が増えるほど「伸び」ます。透明フィルムでできた現在のセイルの場合は非常に微量ですが、限界バテンテンションをかけるレースセイルでは、他種セイルよりも伸び率が顕著なので、2、3回乗るごとに確認して、必要に応じてテンション調節してやることが必要です。一度に限界を超えたテンションをかけるのではなく、微調整をすることでセイル性能を最高状態に保ち、且つセイルを長持ちさせるということです。 さらに、もしあなたが中級者以上であるなら、セイルセクションごとにバテンテンションを調節する必要があることも覚えておきましょう。すでに説明したようにバテンテンションには、テンションをかけるほどドラフトが深くなるという関係があります。セイルは、上部にいくほどドラフトを浅く(一番下のバテンから一番上のバテンに向けて徐々に浅く/一番上のバテン部は平らに)するのがツイスト性能を引き出す条件であるのに、もし一番上のバテンにまで限界テンションをかけてしまったとしたら、そのセクションに不必要な深さのドラフトができてしまって、リーチが開きにくく、ツイスト性能が低下してしまいます。そうした損をしないために、たとえばブームの上に5本のバテンがあるとしたら、ブームのひとつ上のバテンには限界テンションを、その上2本は少し弱めに、さらに上2本は少し緩めます。こうして使い手が調節してやることで、セイルは最高の性能を発揮してくれるのです。 |
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