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Q:T.Aさんからの質問 雑誌を読んでいたらブームの高さについて、1)ブームが低い方が強風に対応できる。2)ブームが高い方が微風で走り出しやすい。と書いてありました。自分はけっこう高めに設定しているのですが、これは本当でしょうか? |
A:私見としては、これは間違いです。これはあくまで「出来る人のオリジナリティー」の範疇で、且つ「大柄か、もしくはパワフルな人の意見」だと解釈すべきでしょう。 実際に、たとえばマウイでは、ブームを低くつけて(胸くらいの高さ!)とてつもなく速い人もいます。彼らの乗り方は、腰でハーネスを横向きに引っ張ることでマスト加重を減少させて、その分だけボードを浮き上がらせて走るという主旨なのですが、それを試すと非常に体に負担がかかり、腰などを痛めてしまう人もいます。もちろん彼らは実際に速いのですから、彼らが「速く走るためにはブームを低く」と主張するのは理解できます。しかし、それは万人に共通することではなく、あくまで個人レベルでのことだと考えるべきでしょう。 こうしたことはハーネスラインの長さにも言えます。ある人は非常に短く、ある人は非常に長く、それぞれに主張はあっても、特定の人のハーネスラインの長さが全ての人にとってベストでないのと同じです。ほんのわずかな乗り方の違いでラインの長さが大幅に違っても不思議ではないのです。 大切なのはそうした特定個人のオリジナリティーではなく、理論的に説明のつく事柄だと思います。そうした意味で、ブームは高い方が、体重を有意義に使えるから強風で乗りやすく、乗り手のパワーに頼らなくてもマスト加重で暴れるボードを抑えやすい、すなわちブームは高い方が強風に対応できる、というのが正しいと思います。それは身長170cmで決してパワフルではない私自身が、アンダースやビヨンなどの長身パワフルトップセイラーとワールドカップなどの場で実際に戦った経験から学んだ理論でもあります。そしてどんなオーバーセイルでもその理論に則ってカバーできたという経験を証明として解説しています。 但し、「ブームは高い方が微風で走り出しやすい」というのは正しいでしょう。強風と同じようにブームが高い方がマスト加重に体を支えてもらいやすいので、微風での「ボードから体重を抜く」というテクニックが容易になります。ブームが低いとボード上に体重が乗りっぱなしになるので、体重を乗せたボードはなかなか浮き上がれないから走り出しが悪くなるというわけです。 もちろんこう書いても、質問者が上達するほどオリジナリティーは発生します。たとえば微風ではブームが高い方が良いとは言っても、それが強風と同じ高さかどうかはわかりません。微風でのパンピングを想定するなら少し低い方が良いだろうし、極端な話、ウェイブのような強風ならば少し低くした方がコントロール性能が増加するでしょう。ひとくちに高くとか低くと言ってもその度合いにはさまざまあるので、オリジナリティーを前面に取り上げた雑誌記事に影響されすぎることなく、さまざまと試してみた中から正しいと思うことを吸収することこそ大切だと思います。 |
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