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Q:H,Mさんからの質問 マストの上下の組み合わせについて。例えばベース(下のピース)を430cmのカーボン91%で、トップ(上のピース)を430cmのカーボン60%で組み合わせて使った場合、それが使えるのかどうか、またどのような問題が発生するでしょうか。 |
A:マストのベンド(曲がり方)は大きく3つに分類できます。ひとつは(今のほとんどのマストがそうである)トップからボトムまでが均一に曲がる「イーブンベンド(コンスタントフレックス)」、ボトム部(下の方)があまり曲がらず対してトップ部(上の方)が曲がりやすい「トップベンド」、ボトム部が曲がりやすくトップ部が曲がりにくい「ボトムベンド」。このうちボトムベンドは、昔ハワイ系のセイルに重宝される傾向がありましたが、今そのマストに合致するセイルは年代的に多分現存しないので存在そのものが無いと言えます。またトップベンドは特にレース系のセイルに重宝されたマストカーブで、これもまた今はほとんど存在しませんが、使えないかといえばそんなことはなく、「使いようによっては使用可能」なマストカーブとして今も「あり」です。 イーブンベンド(コンスタントフレックス)が主流の今のマストですが、同じ長さのマストでも、カーボン含有率が高い方が「硬い」という公式が成り立ちます。すなわち質問の場合、カーボン60%のトップピースはカーボン91%のトップピースと比較して、同じトップピースなのに柔らかい(曲がりやすい)ということ。 質問はカーボン91%のボトムピースに、カーボン60%のトップピースを組み合わせたら?ですが、上記の関係を考えると、そこで組み上がるマストは、コンスタントフレックスではなく、トップベンドの色合いを持つだろうと想像できます。 その想定の上で考えを巡らせてみましょう。ここで問題となるのが質問者の使うセイル。それがレース系のセイル、すなわちカムセイルか、もしくはノーカムでもフリーレースと呼ばれるような走り系のセイルなのか、もしくはウェイブ系の、フリースタイルやピュアウェイブセイルなのか? トップベンドのマストに合致するのはレース系のセイルです。それは質問者の使うセイルが、カムセイルであるか、もしくはノーカムでもフリーレースセイルである必要があります。さらに一歩譲ってフリーライドセイル。それであるならチューニング次第で十分に互換可能だと思えます。しかし使うセイルがフリースタイルセイルやウェイブセイルであるとしたなら、その互換パーセンテージは前者に比べて低くなると考えられます。 質問者の使うセイルがトップベンドでの互換はアリだとしても、それは決してベストでは無いし、さらには、その組み合わせでセイルの性能を引き出すためには、それ相応のチューニングも必要になります. セイルを、イーブンベンド(コンスタントフレックス)のマストと、トップベンドのマストで張り比べると、まずその違いはリーチのダラダラ加減に現れます。簡単に言うなら、同じだけダウンを引いたと仮定して、トップベンドの方がリーチがダラダラになりがち。 またドラフト。特にブームあたりから下のドラフトはトップベンドの方が深くなる傾向があります。 この2つを上手に解消するのが、トップベンドのマストを使う際のポイントになるでしょう。では実際にどうすれば良いのか? その答えは難しくありません。ただアウトテンションに気をつけるだけ。ダウンを規定値まで引いたとしましょう。するとイーブンベンドの推奨マストの時よりもトップベンドのマストの場合、ドラフトが深く、リーチがダラダラになる。きっとそうなりますが、そこは「そうなるものだ」と理解してそのままにしておいて、です。そして次にアウトを引くわけですが、ここに注視。アウトを規定値まで引こうとした時、たぶん、ですが、テンションが強いと感じるはずです。すなわち普通なら簡単に引けるはずのアウトテンションが、ブームエンドに足をかけて強く引かないとならないかもしれない。そうなると、とんでもなくアウトを引きすぎなんじゃないか、と錯覚してしまいますが、そこに執着することなく、ドラフトが「このくらいが良さそう」なところまで引く。アウトテンションは引くほどにリーチテンションが強まります。すなわちアウトテンションを強くかけることで、深いドラフトを適度な浅さにできるだけでなく、リーチのダラダラも同時に解消できるということ。そうして強すぎだろ!と思うところまでアウトを引いて、しかし気づいてみればそれはそのセイルの求めるアウトの規定値だった、なんてこともあります。 こうしたチューニングには乗り手の経験値が必要です。経験値が高ければさほどの苦労なく良い落とし所のチューニングに辿るつけるでしょうし、経験値が低ければいつまでも良い状況に辿り着けないかもしれません。残念ながらそこに関しては質問からは判断できないのですが、しかし質問に戻るならトップベンドの色合いを持つことになるだろうトップピースとボトムピースの組み合わせは、推奨マストのような100%の性能とはいかないけど、チューニング次第では8割を超える性能として使えるはずだ、という結論です。 |