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Q:N.Nさんからの質問 ゲレンデが低温のため冬のシーズン、厚手のグローブを着用しています。当初Mサイズを使っていたのですが、あまりに握力(特に前腕)が低下するため、やむなくXLサイズに変えたのですが、それでも腕パンパンで、特にガスティーなコンディションではジャイブ後にブームを握り変えることさえできなくなってしまいます。ウエットスーツに問題があるのか、グローブに問題があるのか、寒気の中でももう少し快適にブームを握れる方法があれば教えてください。 |
A:半袖でグローブ未着用と、長袖のウェットスーツとグローブ着用では、言うまでもなく後者の方が腕の張りは激しくなります。しかし質問者の場合は、そんな常識的な範囲を超えて腕の張りに困っていると思われます。ウェットスーツのサイズが合っていないとか、キツキツのグローブを使っているなら別ですが、指先を覆う部分が湾曲するなどのウインドに特化したグローブを無理して大きなサイズに変えても解決しないということなので、問題は別のところにありそうに感じます。そこで、身に付けるもので問題解決するのではなく、別の視点から腕の張りの解消を模索してみましょう。 腕の張りの原因のひとつに、「ハーネスラインの長さ、もしくは位置が合っていない」「ハーネスワークが未熟」があります。ハーネスワークの未熟に関しては練習しましょうね、ということに言葉が尽きてしまいますが、ラインの長さや位置に関してはすぐに試せる方法があります。 まず長さ。以前、このコーナーでも解説したことですが、ラインが長すぎるとどんな上級者であってもハーネスを使い切ることができず、俗に言う「手持ち」になって、すなわち両腕の力に頼ってブームを握り続け、支え続けることになる。もちろんそれだと腕に負担がかかるのですぐに腕は張ってしまいます。プレーニングに合わせてラインを短くすると風が抜けた時にラインが外しにくく沈してしまうので、それを嫌ってラインを長くしているという人もいますが、それではプレーニング時に手持ちになって早々に腕が張るのは当たり前。あくまでプレーニングしている時に両腕がリラックスできてハーネスフックだけでセイルを支えることができる長さにしなければなりません。これを前提とした上で。 ラインのブーム取り付け位置が後ろ過ぎると前の腕が疲れやすくなります。でも、もし質問者が暖かい季節はまったく腕が張ることなく快適に乗れているとするなら、それはきっと正しい位置にセットされているということだろうから、その先、寒い季節に限定のライン位置を考えてみましょう。スラロームで誰かとギンギンに競争している場合は別にして、普通にプレーニングしている状況なら、ハーネスワークができているならば後ろ手を離しても走れる。でも寒さに体が縮こまり、ウェットやグローブで筋肉を押さえ込まれる季節だからこそそれができないとするなら、その解消は、ハーネスラインを少し前にするという方法。ラインをブームに止める「前側」のブームストラップだけ1センチほど前にセットしなおすという方法です。ラインの前側だけ前にすると相対的にラインが短くなりますが、それはセイリングに影響を及ぼさない程度の範囲のはずなので、そこは気にせずに。もちろんそれでは最速は得られないかもしれないけど、その分だけ快適さを得られる可能性はあると思います。 もうひとつ。寒気に寒さを最も痛感するのは指先。そして指先の寒さを痛感する理由として、指先への血流が鈍くなるというのがあります。ポンプである心臓から送られる血流が、暖かい時は指先まで行き届くのに、寒い時は手前で滞る。だから余計に指先に寒さを感じ、同時に腕の張りに繋がる。とするならば、指先まで少しでも多くの血流を行き届かせることができれば、腕の張りも少しは解消できるのではないか、という考え。 両腕を高く上げたなら、血流は心臓から重力に逆らって指先まで上がらなければなりません。でも腕を下げたなら重力に助けられて指先まで行き届きそうに思えませんか。ならばセイリング中に「心臓よりも高いところに位置する両腕」を、それよりも少しでも低くすれば指先の痺れも腕の張りも少し改善できそうに思えませんか。 その仮定に立って私は冬場、夏場よりもブームを1.5センチほど低くセッティングしています。寒さに縮こまって体が小さくなり、ウェットに締め付けられてさらに体が縮こまり、それだけでも体を思う存分に大きく使える夏場よりも「体が小さくしか使えない」のだから、少しブームを低くセットして当たり前だろうと思えるのに加えて、指先への血流を考えればなおさら、低くすることで寒さに適応したブームの高さに廻り合えるのではないか。(あくまで私事として)実際にそれをして効果を感じているので、質問者も試してみることをお勧めします。 もし寒さに耐えられるのであれば、腕部分だけ5ミリの裏起毛のウェット生地ではなく薄手の3ミリ生地でフルオーダーすれば、またグローブなど使わずに頑張れるのであれば、それで簡単に腕の張りは解消できるでしょう。でもそれができないから悩んでいるのでしょうから、身に付けるものではなくてチューニングという、これまでとは異なる視点から腕の張りの解消を試してみる価値はありそうに思います。それでもまったく効果無しかもしれませんが、もしかしたら思った以上の効果があるかもしれないので、ぜひお試しを。 |