マストをカットする

QM.Yさんからの質問

RDMカーボン90の460cmマストを30cmカットして430cmにして使うことは可能でしょうか。

Aマストをカットして使うことは可能です。例えば日常使いのマストのボトム部に数センチのヒビらしきものが見えて、なので5センチ切って安心を担保に使う、などというのは良くあることです。しかし30センチのカットとなると、ちょっと数値的に大きいので幾つかの注意が必要になるでしょう。

今のマストは上下2ピースが主流。その場合、切るとしたら、上端のマストトップ部、2ピースの接合部、下端のボトム部、この3箇所があります。

2ピースの接合部を切るのはリスクが高すぎます。いざ切ってみたらピースを接合しようにも入りきらない、もしくはスカスカでユルユルになった、なんてこともあるので、この部分をカットするのは、これまで同じマストを幾度も切った経験があり、その中で間違いなく適切に対処できる経験を持つショップやスクールの熟練者に限られると思います。なのでここを切るのは、基本、無し。

マストトップを切るのは有りです。特にそのマストでの使用想定セイルが、いつもセイルトップをアジャスタブルベルトで30センチ伸ばして使っているような場合は、マストトップを切るのは良いアイデアになるでしょう。例えば想定セイルのラフ長が460センチで、使用想定マストが460か430どちらでも、のような場合、そもそも460を使ったら頭が30センチ上へ飛び出してしまうのだから、そこを切ってしまっても問題ないだろうということです。 マストトップをカットするとマストは硬くなります。マストの中で最も細くてしなやかな(曲がりやすい)箇所を切るのだから全体的にそれまでよりも硬くなるという論理ですが、いつもトップを30センチ伸ばして使っているとするなら、そもそもいつも上端30センチのしなやかな部分を失った状態で使っているということなので、何ら問題なく使うことができるはずだということです。ただしマストトップを切る場合は、切り口にプラスチック製のマストトップパーツをあらためて挿入する必要があります。カットした分だけ太くなったトップ部に元のキャップがピッタリと収まるはずはないので、プラスチックキャップにテープを巻く、もしくは一回り太いキャップを購入するなどの一手間が必要になるでしょうアジャスト炙る。

ピースの接合部やマストトップを切るよりも現実的で一般的なのがボトム部を切る方法。ただし切り口がエクステンションジョイントのリング(マストの行き当たる留め具)にピッタリと接するように、切り口が斜めにならないように切る必要があります。日常的にDIYをする人ならば別ですが、多くの場合、ざっくり切ったら切り口が斜めになるものなので、まずはボトム最下端から30センチに印、そこにマスキングテープを、貼り始めと貼り終わりが綺麗に重なるように一回り。そしてそのマスキングテープの縁を丁寧に鉄のこぎりでカット。切り終えたら100番くらいの紙やすりで切り口を整える。

太いボトムから細いトップへと太さが大きく変化するSDMの場合、ボトム部だけ特別に補強が施されているものもありますが、全体的に細いRDMでは、ボトムを切ったら補強を外れて強度に問題が生じるということは、これまでの経験上では、ありません。なのでボトムを切ることに問題は無いので安心して良いと思います。

ただしひとつだけ注意。ボトムを30センチ切ると、その分だけ挿入部も細くなります。太さの違いがあまりないRDMであってもやはり切ればそれだけ細くなる。そうして細くなったボトム部にエクステンションジョイントが挿入できるのか、という問題。例えば質問者が全長45センチのエクステンションジョイントを、今回の質問にあるマストを30センチカットしたいセイルにおいて、エクステンションゼロ、すなわちエクステンションを全く上げない状態で使っていたと仮定した場合、マストの中にはほぼ45センチのジョイントが挿入されていることになります。でも30センチ切ると少し細くなるので、45センチのジョイントが丸々挿入できなくなるかもしれないという懸念。ジョイントの上端がマストに行き当たってそれ以上入らない、ということがあるということです。もちろんその場合は短いエクステンションを使えばクリアできることがほとんどなのですが、場合によってそれは新たに短いエクステンションを購入しなければならないなどの出費に繋がる可能性もあるので無視できない重要な要因と、失念しない必要があると思います。