|
|
|
Q:S.Sさんからの質問 セバーンのMACHを使っているのですが、完プレでセイルを引き込み切るとき、フットが後ろ足ストラップに引っかかって気になります。引き込むときはストラップを「またぐように」しないと引っかかるし、開くときはストラップに引っかかって「つまずく」感じで開きにタイムラグが生じ、そこに意識を向けなければならないのがストレスに感じています。 |
A:後ろ足の向こう側のストラップを越えて手前までフットを「引き込み切れる」人はそうそういません。それはスラロームにおいてトップ技術を持つレベルで、だからこそ質問者の悩みが深刻だということがわかります。 (写真はセバーンではありませんが)写真のようにフットを後ろ足ストラップの内側まで引き込む際に、フットがストラップに引っかかってそれがストレスになっているというのが質問者の悩み。 セバーンのトップレースセイルであるMACHにおいて、同様の悩みを持つ人は他にもいます。実際につい数ヶ月前も親しい高技能者と同様の会話をしたので、その内容も踏まえて回答したいと思います。 MACHを使う人ならお気づきでしょうが、当該セイルのフット部の、ちょうど後ろ足ストラップに擦れる箇所には補強が施されています。その補強は引き込みの際にフットと後ろ足ストラップが擦れるからその保護の役目なのだろうと思っていたのですが、実際はストラップに入った後足のツメがフットに擦れて痛いから、その保護の役目とのこと。すなわちこのセイルは、向こう側のストラップを越えて板の中心線にフットが並ぶどころか、それをはるかに越えて手前のストラップに入った指先にフットが当たるほどまで引き込まれることを想定した世界トップレベルの人のためのセイル。 完プレして、完璧にセイルが引き込まれアフターレイキした状態で、フットラインとデッキラインが隙間なく密着するほど(飛行機のボディーと翼の間に隙間が無いのと同じで)、隙間から風が逃げて揚力が減少するなどのロスを生じないため理想的。しかし実際には、下の写真のように隙間があります。 フットラインとデッキラインが平行であることからセイルが引き込まれているのがわかるでしょうが、その際にもフットとデッキには隙間がある。 この隙間が、セイルを閉じたり開いたりの可動域になっています。対してMACHはこの隙間が狭い。それは限りなく理想型に近いとも言えますが、反面で可動域が抑制されるため、質問者の悩みのような後ろ足ストラップに引っかかるという現象が生じてしまうわけです。 さらに、もし質問者がセバーンとコンビを組むスターボードのI-SONICを使っているとしたら、I-SONICはジョイントボックス付近が「掘られて」、ジョイントポジションが低く設定されているため、余計にフットとデッキの密着度が高まり、尚更にフットの引っかかりがストレスとなって感じているかもしれません。 フットとデッキの密着はたしかに理想ではありますが、そこにストレスを感じてしまったら。理想を求めるならそのストレスは乗り手の技術でカバーすべきでしょう。しかし、ストレスを善しとしないなら理想に手心を加えて、ストレスを解消すべきでしょう。 ストレスの解消方法は2つあります。ひとつはエクステンションをひとつ上げてセッティングしてやるというチューニング。エクステンションを上げるとセイル側のプーリーとジョイント側のプーリーとに間が空きます。ひとつエクステンションを上げたなら最低でも2センチ強の隙間が開くでしょう。この隙間が、デッキとフットの隙間に直結します。すなわちこれによってフットが2センチ上がるということ。その2センチ増えた隙間がストラップとの引っかかりを解消してくれるということです。 ただしこの場合、セイル側のプーリーとジョイント側のプーリーとに2センチ以上の間が空くことで(ダウンシートが余ったような状態になることで)、フットにかかるテンションが弱まる恐れがあります。それを解消するためにフットベルトをそれまでより強く引く。そうすることでフットのテンションを、エクステンションを上げる前と同じに保ってやるというプラスアルファの行為を追加します。 もうひとつの方法は「ジョイントを5ミリ後ろに下げる」。ジョイントは前にするほどアフターレイキが強まり、後ろにするほどアフターレイキが弱まる(=フォアレイキする)という関係が成り立つので、ジョイントを下げることでアフターレイキを弱め、それでフットラインを意図的に上げてやるという方法です。 たぶんひとつ目の方法でストレスの大部分は解消できるでしょう。それでも足りなければ2つ目の方法を追加する。そうしたら質問者の悩みは完全解消すると思います。 ちなみにプロの中には、板に取り付ける側のジョイントベースに細工をして高さをかさ上げし、それでエクステンションを伸ばすこと無くフットを押し上げている人もいるようです。プロでさえそうしたチューニングによってフットがストラップに引っからないようにしているほどなので、質問者の悩みは多くの人に共通している事案なのだとわかります。 今回は質問内容に合わせて、知識もそれなりに豊富だろう上級者を対象に回答しました。そのため、もしかしたら内容に不明点があるかもしれません。その場合はあらためてご質問ください。噛み砕いて説明させて頂きます。 |