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Q:H.Kさんからの質問 ちょっと前のハイウインドの記事で、去年までのフォーミュラフォームはハーネスラインが長かったのに対して、今年は短くする選手が増えているようなことが書かれていましたが、どういう理由からなのでしょうか? |
A:個人的な見解としては、ハーネスラインの長さを流行に合わせるのに反対です。試してみるのは良いことだし、試した結果が良いものならば取り入れるべきですが、レースにおいて流行を追うのは失敗の元。たとえば昔、パンツハーネスが出現したとき、私以外のプロレーサー全員がパンツハーネスに変更しました。100人の参加者の中でウェストハーネスは私ひとり。皆がパンツを使う理由は「速いから」でしたが、私は試した結果どうしても自分のフォームにパンツハーネスが合わず、ひとりでウェストハーネスを使い続けました。では成績が落ちたのか?と言えば、そんなことはなくシングルランキングを確保できていたし、現実、その後現在に至るまでにウェストハーネスも復活しました。流行とはそういうものだと理解すべきです。 しかし、ハーネスラインがそうして長さを変える理由を検証することはレーサーとして大切でしょう。そこで一緒に考えてみましょう。 まず、ハーネスラインが長くなった原因を考えると、フォーミュラボード特有のクローズというのがあります。ショートレンジでワイドボディーのフォーミュラボードでは、ボードを横から(両足で)プッシュしないように、ボードを「上から抑える」ことが必要で、そのためにはマストをより立てて体を起こさなければなりませんでした。そしてマストをより立てるために長いハーネスラインが必要だったのです。またダウンウインドでは、やはり長くないと踏ん張りが効かずに前に飛ばされやすかったという理由もあります。 しかしそれは、ワイドで且つ厚さも十分なボード形状だったときの話。今年のフォーミュラボードはワイドでありながら全面薄く、ボリュームもさほど大きくありません。なので去年ほど無理してマストを立てる必要が無くなったという理由があります。マストを立てるためにハーネスラインを長くして、それに合わせたフォームを取らなくても、自分の使いやすいラインの長さで上れるようになったということ。同時にボードの薄さはダウンウインドも走りやすくしたので、踏ん張るために必要以上にラインを長くする必要もなくなったということです。すなわち、無理してハーネスラインを長くしていたのだけど、ボードが良くなったから無理する必要がなくなった。そうして自分に程良い長さにしたら、前よりも短かった。というのが質問の答えになるのではないでしょうか。 もうひとつ、ブームの高さも影響しているかもしれません。フォーミュラの場合、巨大なボードとセイルを抑えるためにブームは非常に高めにつけることが多いですが、ボードが抑えやすくなったことで多少低めにしても大丈夫になりました。そして必然的にブームが低くなればハーネスラインもその分だけ短くなります。個人的にはブームは相変わらず高いままですが、ボードが新しくなってブームを低くした人もいることでしょう。 いずれにしてもラインの長さは、道具の進化と、それを最大限に使いこなすために、さらに自分のフォームとの関係の中で変化するものです。そうしたことを踏まえた上で、流行を試しながらも、あくまで流行に流されることなく自分流を発見することこそ大切だと繰り返しておきます。 |
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