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Q:K.Mさんからの質問 超ガスティーなゲレンデでのハーネスラインの長さについて。ラインのかけ外しがしやすいようにブームは低め、ラインは長めでセットしています。しかし順風になるとブームに加重し切れていない違和感があり、またラインが長いのでどうしても体が寝がちでカイトセイリングになってしまいます。そうした場合、かけ外し重視で今のままで練習すべきか、それとも、かけ外しのしやすさを犠牲にしてもブームを高く、ラインを短くセットすべきか悩んでいます。 |
A:ハーネスラインの長さとブームの高さは、自分が最高に楽しめる安定した風速を想定して合わせるべきで、それが淀みない基本になります。なのでブームが低いと感じているなら気持ち良く乗れる高さにすべきだし、ラインが長いと感じているなら短くすべき。これは絶対的な行為です。 そこから先は応用問題。質問の「超ガスティーな」という状況は、この応用の範囲にあります。「ベストなコンディションでのベストパフォーマンス」を基本として、そこに応用をいかに追加するかは次の話。 質問に合致する応用領域で威力を発揮するだろうアイテムが(私も使っている)アジャスタブルハーネスラインになるでしょう。それは、後ろ手の簡単な操作で(プレーニングしてる最中でも)ラインの長さを適時、わずかな労力で変えることのできる優れたアイテム。私的には、なぜ「みんなこれを当たり前に使わないのか不思議でならない」ほどの必要不可欠なアイテムだと思っています。 例えば私の場合、ホームゲレンデである逗子の夏のオンショアの風は、湾を出てしまえば吹いているものの湾内は超ガスティーでほとんど走れないというコンディション。そのくせ厄介なことに突然ブローが入ったりもする。なので湾を出るまでの1キロ弱の距離は、ノンプレーニングの棒立ちで上りながらもブローに対処すべくハーネスをかけずに「手持ち」で乗り切ろうとする。とは言え現実には、途中で疲れてハーネスをかけたくもなるし、ブローが入ったなら短距離でもプレーニングしたいわけで、そうした状況では、ベストなラインの長さより10センチほど長くアジャスタします。それならば棒立ち状態でもかけ外ししやすく、瞬間のブローで短距離のプレーニングもできるから。この場合の10センチとはブームとフックの間のことなので、実際にアジャスタ操作するラインの長さとしてはその倍の20センチ。これを1)のアジャスタ状態としましょう。ちなみにこの1)のラインの長さは、吹いてる中でクォーターよりも深く風下へと下る際の、重心は最大限に後ろ、でもセイルはアフターレイキさせすぎずに乗りたいという状況でも利用する長さです。 本栖湖などのガスティーなゲレンデにおいて「最大ブローでもちょっとアンダー、風が抜ければ棒立ち」というような状況下では、ベストな短さよりも2〜1.5センチほど長くアジャスタします。実際のアジャスタ操作ではラインを4〜3センチ緩めるということ。そのわずかな違いが、瞬間ブローが途切れてストラップから足を抜いて棒立ちになったとき、どうにかハーネスを外せる保険になります。もっと短いベストな長さでは棒立ちになった瞬間、「板の上でジャンプ」しないとラインを外すことができず、そのタイミングを失うとハーネスが外せずに沈するという情けない大失敗に陥るので、それを回避できるのがこの長さ。これを2)のアジャスタ長さとしましょう。 同じく本栖湖でも、「ブローはちょいオーバー、風が途切れてもまったく無くなるほどではない」ベストなゲレンデコンディションであれば、風が安定して吹いている中で乗るのと同じに、自分にとってベストな長さまで短くします。私の場合それは、ハーネスラインに「肘を引っかけて」「ブームを握ろうとしたとき」、ブームを握ることはできずに手首あたりがブームに当たるくらいの長さ。ブームの高さが自分にとってベストな目のあたりであるとき、これが私的にベストな長さなので、アジャスタブルハーネスラインを最も短く操作したときにこの長さになるように調整してあります。これを3)としましょう。 本栖湖のいちショット。どんなにガスティーであっても「ブームはジョイントを挟んで立って目の高さ」「ハーネスラインは幅25センチ、長さは肘から手首まで」というのが私的な基本。その基本を守った上で、超ガスティーなどの厄介な状況に対処するためにアジャスタブルハーネスラインを頻繁に操作して乗っている。 さらに私事を言うなら、上記した1)から3)を状況に応じて使い分けることで、さまざまな状況それぞれでストレス無いハーネスラインの長さを手に入れるようにしています。一番短いベストな3)の長さのままだと、風が弱ければ無理しないとハーネスはかからず、無理してかけてもいざ外したいときには外せない。だからと1)のように長くしたままだと(これが今の質問者の状態でしょう)、良い風が入った時に気持ちよく乗れないという本末転倒。そうした葛藤を一発解消してくれるのがアジャスタブルハーネスラインだということです。 昔話ですが、私が現役だった遥か昔、20センチくらいのとても短いハーネスラインを使っているトッププロがいました。その道具を使わせてもらったことがあるのですが、吹いていないときはもちろん、強風でもそれは短すぎてかけるこそすらできませんでした。フックが胸あたりに位置するまでグイグイとウェストハーネスを引き上げてどうにか事なきを得た記憶があります。逆に最近では、特にフリースタイルなどアクション系ではラインはちょっと長めが主流。それもまた使わせてもらったことがありますが、残念ながら長すぎて、かけてもラインが弛んだままで役立たず。このように必ずしも「上級者の指向がそのまま自分に当てはまる」「今の流行が自分に合致する」とは限りません。ようするに「誰が何と言おうと」「自分さえ良ければそれで善し」なのがハーネスラインの真髄。「ならば自分にとってどの長さがベストなのか」。それを知るためのアイテムとしても、アジャスタブルハーネスラインは良い相棒になってくれるでしょう。大胆に短くしたり長くしたり、あれこれと調整してみたなら、もしかしたら驚くほど短いところが自分にベストだと気付くかもしれません。 もし質問者がこの記事を読んで「アジャスタブルハーネスラインを使ってみよう」と思ったとしたなら、選択肢を間違えないように。アジャスタブルハーネスラインにはいろいろな種類があり、その中のプラスチックのパーツとベルトのタイプは選んではいけません。なぜならプレーニングしながらの操作が不可能だから。選ぶべきは金具のパーツの中に滑車が入っていて、ハーネスラインの余りの部分を引くことで操作できるタイプ。さらに同種の中にも操作しやすいものとそうでないものがあるので、そのあたりは行きつけのショップでご確認。また、その先としてアジャスタブルハーネスラインのチューニングや操作方法で悩んだなら追加で質問を。私自身、加齢に伴う体力低下や技量低下、ビールを飲んだら二度と元に戻らない腹回りのメタボと体重増加など、そうしたことを道具でカバーしている部分が多々あるので、ラクに且つ効果的に使うための幾つかのアイデアはお伝えできるかもしれません。 |