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Q:M.Yさんからの質問 初めてカムセイルを使いました。ガストラCOSMICにリバティーのRDM100の組み合わせです。キレイに張れていると思うのですが、RDM用のカムを使用しているにもかかわらず、カムのところを押すとカムがマストから浮きます。特に上のカムよりも下のカムの方が浮きスペースが大きいようです。それで使用中に外れるなどという支障は無く、またジャスト〜アンダーの風ではカムの返りも良好で問題無く乗れました。でも、そうして浮いた状態で使っていても良いのかとても気になります。押してもスペースが空かないまでスペーサーを噛ませて対処すべきなのでしょうか。 |
A:使用するマストによって(SDMかRDMか)使用するカムが異なりますが、そのマストに対応するカムを使っても、カムとマストとの間に不必要なスペース(空間)が空く場合、スペーサーと呼ばれる薄いプラスチックのパーツをバテンの入っているカムインサート部に挿入し、カムを前方に押し出すことでマストとの隙間を解消するというのは、カムセイルにおいて考慮すべき要因です。しかし無闇やたらにスペーサーを入れれば良いというものでもありません。 セッティングして岸で横たえた状態で、カムの入ったバテンの、バテンとスリーブの縫い目の交差するあたりのところを押して、もしカムが外れてしまうようならそれは明らかな浮き過ぎです。この場合はスペーサーを入れてカムとマストの浮きを解消する必要があります。しかし質問者の場合は、これには該当しないのだろうと思われます。押せばカムが浮くから気になるけど、押さなければ気にならない程度なのではないでしょうか。 カムのところを押したら浮く、という行為。これはそこにピンポイントで力をかけているということ。しかし実際のセイリングで、それほどピンポイントで力がかかることはありません。どんなにオーバーでも、その力はセイル全体に分散してかかるので、ある特定のバテンのカム部だけに力がかかることは有り得ません。にもかかわらず、あまり気にしすぎるのは逆効果にさえなるかもしれません。 私はロフトセイルのスイッチブレードというセイルを使っています。RDMのマストを使い、RDM用のカムを装着し、しかしスペーサーは使っていません。結果、カムのところを押せばカムとマストが浮く状態にあります。対して同じサイズのまったく同じセイルで、スペーサーを2枚も3枚も入れてカムとマストを(押してもまったく隙間が無いほど)強固に接続している人もいます。メーカーが試乗会でみなさんに試し乗りしてもらう同セイルもまた、スペーサーを噛ませてあったりもします。ならばスペーサーを噛ませるべきなのか、正解はどっち?残念ながらその答えはとてもアバウトで、どちらが正解とは言い切れません。なぜなら、実際に双方に違いがあるのかと言えば答えは「NO」だから。スペーサー無しでカムが浮く状態で使用している私自身、カムをマストに押し付けるべくスペーサーを噛ませている人と実際に競争しても、正直なところスペーサー無しの私の方が速く走れてしまったりもするのだから、スペーサーの有る無しには、みなさんが思っているほど深刻な意味が無いことがわかります。それほど繊細にあれこれとチューニングしなければならなかったのは遥か昔の不出来な時代の名残りで、今の完成形なセイルはそれほど繊細にチューニングしなくても大丈夫だということなのかもしれません。 手で押してカムがマストと浮くかどうかは、単なる「見た目」の問題です。もちろんそれは気になるところではありますが、大切なのは見た目よりも中身。もっと大きな視野で総合的に判断することが必要でしょう。その最も大きな指針が、セイルの返しやすさという実務になるでしょう。 スペーサーを入れてカムとマストを密着させれば、たしかに見た目は良いかもしれませんが、入れた分だけセイルの返りは悪くなります。そうしたセイルの返り具合は、通常、風が強ければそこそこ返りやすいけど、風が弱くなるほどに返りにくくなります。質問者は現在、アンダーでも返りやすいのだから、そのメリットをスペーサーを入れることで殺してはいけません。 ちなみに今のニールのカムセイル。ニールはウルトラカムという独自のシステムを採用していて、バテンテンションをかけるとカムがレール上をスライドして、カムとマストが密着するシステムですが、実際のところバテンテンションを通常レベルでかけると密着度合いが高すぎてセイルが返りにくいという症状が現れるため、多くの人がバテンテンションを相当に弱めてカムの返りを良くしています。このことから何がわかるかと言えば、カムとマストが密着すれば良いという公式は、現実問題として成り立っていないということです。 とは言えスペーサーを1枚入れるだけならセイルの返りに何等問題無いかもしれません。さらに2枚入れても問題無く返るかも。そこは試してみる価値のあるところでしょう。アンダーの、特にまったくプレーニングしないような弱風のタックやジャイブ後のセイル返しにおいて、スペーサー無しの現在と同じようにセイルが容易に返るのであれば、その範囲においてスペーサーを入れることは良いアイデアでしょう。(プレーニングしないアンダーで今と同様にセイルの返りが良いことが絶対条件。わずかでも返しにくくなったら即排除)且つ、そうしてスペーサーを入れたとしたら、カムとマストが浮くという気になる点も解消できるでしょう。そこに関しては今後、いろいろな風速で試し乗りしての結果を踏まえての要検証というところになると思います。 |