ジョイント位置

QR.Sさんからの質問

今年、FANATICのSTINGRAY150を購入しました。使用セイルはV8 8.0と7.0なのですが、ジョイント位置がイマイチ納得いきません。いろいろと試してはいるのですが、上り角度や走り出しなどに影響するジョイント位置をどのように決めれば良いのか、またどのような点についてチェックすれば良いのか教えてください。

Aジョイント位置を決めるのは簡単な作業ではありません。それがビギナークラスであれば、おおよそ間違いのない場所にセットされていれば良いでしょうが、乗れる人にとっては、自分に合った、もしくは使用セイルに合った位置が探せないと、乗り心地に違和感があったり、思うような走りができなかったりするので、余計に難題だと言えます。

ジョイント位置は、ストラップ位置によって左右されます。ストラップが前にセットされているときと後ろにセットされているときとでは、テイルの沈み具合が異なるのでジョイント位置も大きく違ってきます。しかしその関係を説明するのはケースバイケースで非常に難しいので、ここではストラップ位置が的確であるという前提に立ってジョイント位置について解説しましょう。

まず最初に、ジョイントは可能な限り後ろにセットするもの、という概念を基本として持ちましょう。ようするにチューニングでは、これ以上後ろにしたらちゃんと乗れない、という場所を探すということです。なぜならプレーニングとは「なるべくボードを浮かせる」ことで、ボードが浮くほど速く、ターンしやすくて乗りやすいから。そしてジョイントが前であるほどボードは浮き上がらず、ジョイントが後ろであるほどボードが浮き上がりやすいからです。その基本を忘れずに、まずは以下のことをチェックします。

1)クローズでボードがすぐにベアする。
2)平水面のアビームでスピードが伸びない。
3)波を越える、もしくは波を後ろから追い越すときにノーズが突き刺さる。
4)ジャイブ中にジョイント付近のレイルが接水してターンしにくい。

上記4つはいずれもジョイントが前過ぎるときに起こる現象。それぞれを解説すると、

1)クローズではいつもノーズがラフするようにして、そのラフをセイラーが抑えてコントロールして走るからこそ、クローズという限界角度を走ることができます。しかしジョイントが前過ぎると、マスト加重が強すぎるためにボードにはベアの力が発生し、それがクローズ角度を不安定に、結果としてクローズを不完全にしてしまうので、少なくともジョイント位置がそこでは前過ぎるのがわかります。的確な位置はそれよりも後ろにあるということです。(注/クローズでは基本的に少しジョイントが前の方が上りやすいですが、前記したようにベアするようでは前過ぎるということ)

2)アビームは一番ボードが浮き上がってスピードが出るセイリングなので、ここでスピードが思いのほか伸びないということは、ジョイントが前過ぎるためにノーズが浮き上がるのを抑えてしまっている証拠。なので、少なくともジョイント位置がそこでは前過ぎるのがわかります。的確な位置はそれよりも後ろにあるということです。

3)波にノーズが突き刺さるのはジョイントが前過ぎるかどうかをチェックするのに一番わかりやすい方法です。セイラーのフォームが崩れていない限り、通常はノーズが突き刺さることはないので、もし突き刺さるなら突き刺さらないだけ後ろに移動します。そして、ぎりぎり突き刺さらないところが、ジョイントの一番前だということになるので、的確な位置はそれよりも後ろにあるということです。

4)ジャイブのターンをスムーズに行うには、ターン中に前足ストラップ付近から後ろのレイルだけが接水していることが必要。それ以上ノーズ側のレイルが接水しているとターンが失速し、最悪の場合はブレーキがかかってターン内側に転んでしまうので、ターン中にジョイントの横のレイル付近まで接水しているとしたら、少なくともジョイント位置がそこでは前過ぎるのがわかります。的確な位置はそれよりも後ろにあるということです。

さて、上記4つのチェック項目で、ジョイントが前過ぎであることが認識できたとしましょう。そうしたら、次は、どこまで後ろにすれば良いのか?どこを過ぎたら後ろ過ぎなのか?というチェックを行います。

1)走り出しですぐにボードがラフするために走り出しにくい
2)波を越えるときにノーズが舞い上がる

上記2つはいずれもジョイントが後ろ過ぎるときに起こる現象。それぞれを解説すると、

1)言うまでもなくボードはジョイントを後ろにするほどラフしやすくなります。ビギナーならばジョイントを前にしてベアしやすく、という解説になりますが、それなりに乗れる人の場合は、なるべく後ろにジョイントをセットする、という基本があるわけですから、ラフはするけどそれをコントロールできて走り出しにくくはない、と感じる限界点が、ジョイント位置の最後部になる、ということです。それは、同じボードであっても、セイラーレベルや使用セイルによって異なります。

2)オーバーセイルを除いて(オーバーセイルで舞い上がるのは当たり前なので)、気持ちよく走れるコンディションなのに波を越えたときに想像以上にノーズが舞い上がる(浮き上がりすぎる)としたら、少なくともジョイント位置がそこでは後ろ過ぎるのがわかります。なので的確な位置はそれよりも前にあるということです。

他にも幾つかありますが、まずは主要なところとして、以上の前過ぎ4つ、後ろ過ぎ2つの要件をチェックしてみてください。前過ぎると思ったら、少なくとも的確なジョイント位置がそれよりも後ろであることがわかり、後ろ過ぎると思ったら、少なくともそれよりも前にあるわけですから、後ろに、前に、と移動してチェックするうちに、どんどん範囲が限られて、最終的に的確な位置に辿り着きます。

このようにジョイント位置は、今日チェックしたからすぐに決まる、というものではありません。いろいろなコンディションで試してみることが必要なので、プロでもそれなりの時間がかかるし、一度決まったと思っても、自分が上達したり、使用セイルを換えたら、ジョイント位置もまた変わるものなのです。そうしたチューニングを楽しむこともまた、道具を理解して自分の能力を高めることにつながるので、じっくりと楽しみながら試してみてください。