レースセイルのセッティング

QMさんからの質問

3年目の中級者です。中古のレースセイル(セバーンREFREX7.8m2)を購入したのですが、下2つのカムが入りません。ダウンテンションを緩めてもダメで、大人3人がかりで1時間を費やしてやっとどうにかなる具合。もちろんカムの返りも悪いです。明らかに「何かが」おかしいと思うのですが、理由のカケラもわかりません。

A初回掲載の内容表現にわかりずらい箇所があると思えたのでリライトして再掲載します。

当該セイルは最上級のトップレースセイル。ゆえに必然、必要とするマストも限定されます。そのマストを使っていてなお質問の状況であるならば、今一度、あらためて試してみることが必要でしょう。

カムセイルのセッティングに関しては過去歴で幾度と無く解説したように(例えば2007年の「RS6セッティング」)、その基本は、「ダウンを引かずにアウトを引き、カムが入ってからダウンを引き直す」です。それを今一度おさらいしておくならば、

1)マストを通したらダウンは仮止め。この場合の仮止めとは、実際の場面で言うなら、2mのダウンシートを使っているとして、セイル側及びジョイント側共に3連プーリーに通すと仮定した場合、シートを通してジョイント側のクリートから10センチくらい頭が出る程度。それすなわち「通しただけでまったく引いてない状態」。

2)ブームを取り付ける。このときはまだダウンを引いてない状態で、これからダウンを引いてもカットオフ(ブーム取り付けのためにカットされたスリーブ部)の上端に行き当たらないために、ブーム取り付けはカットオフの限界下端に。このときもしマストがスリーブの奥深くに隠れてブームが取り付けにくければ、ブーム取り付けが可能な状態までマストがスリーブの前側に近づくだけダウンを仮引きして。

3)ブームを取り付けたらブームエンドに足をかけるなどして出来る限りアウトテンションをかける。もしダウンを仮引きしていた場合は、アウトを引いた後に再びダウンを緩めることを忘れずに。そしてダウンを緩めた分だけさらにアウトが引けるので、その追加テンションも忘れずに。

4)これまでの作業でセイルには、縦のテンションがかからず(ダウンテンション無し)、横のテンションだけがかかり(アウトテンションMAX)、その状態でカムを入れる。カムを入れる際は、「下から順番に上に向かって」。もし一番下のカムが入らないとしたら、それはダウン過多、アウト不足の証拠。一番下のカムが入るまでダウンをダルダルに緩め、アウトを引けるだけ引く、という作業が必要だとの認識を。

5)カムが入ったらダウンテンションをかけ、ダウンテンションが適正になると、強く引いていたはずのアウトテンションも不足になるので適正に引き直す。

ちなみにセイル解体時は、セッティングの逆で、ダウンを緩めてアウトを引いた状態で、カムを「上から下に向かって順番に外し」ます。その順番を間違えたり、アウトを緩めすぎてしまったりすると、その最たるトラブルとしてバテンの先端が「折れる」。それは必然のトラブルです。

質問者は前記したセッティングの手順を実践しているようですが、それでもなお苦慮しているということは、たぶんまだダウンテンションを引きすぎている&アウトテンションの引きが甘い、のだと推測されます。

カムが入れにくければ「もっとダウンを緩め」「もっと限界力(力の限り)でアウトを引く」。中途半端に緩めても中途半端に引いても効果は薄いと理解して今一度試してみてください。ちなみにリフレックスを継続して使用してプロの話として「ダウンを緩めてアウトを引いて入りにくかったことは無い」とのことでした。

リフレックスは年代によって、特に一番下のカムが大きなタイプと小さなタイプがあります。そのうちの大きなカムのタイプの年代のものは特にカムが入れにくい傾向があるのは事実ですが、それでもこれまで記した方法によってカムが入らないことは無いはず(指定マストであれば、の条件付きですが)。繰り返しますが、入れにくいのは、まだまだダウンの緩めが不足、アウトの引きが不足。もっとダウンを大胆に緩め、もっとアウトを大胆に引いて今一度試してみてください。

なお、トップレースセイルに関してカムの返りがイマイチなのは当然。トップレースセイルを使うのはトップセイラー限定で、カムの返りは技量でカバーして当たり前なので(例えばジャイブ後のセイル返しの場面、上級者は風の取り入れが上手なので簡単にセイルがローテイトするのに対して、ジャイブさえ未熟な場合はローテイトにも苦慮するのは当然)、もし質問者が自己分析してその技量にまだ到達していないと思えるなら、トップレースセイルを選択したことに、もしかしたら先走り感があったのかもしれません。

最後にバテンテンションに関してですが、リフレックスの名の由来はブームの上のバテンの「リフレックス・システム」にあります。リフレックスシステムとは、バテンテンションの前半分(正確には前3/4くらい)に「バックル」でテンションをかけ、後ろ側は通常のエンドのビスシステムでテンションをかけるという「二分割テンション」のシステム。その基本は、バックルで前方に強いテンションを、それによってドラフトを固定。対してバックルから後ろは、テンションを軽くすることでリーチテンションを弱めてリーチを軽く開かせる、にあります。これは同社のセカンドレースセイルにも共通するシステムですが、ここに記した内容に「?」と思われたとしたなら、それは質問者のみならずセバーンのカムセイルを使うにはまだ知識不足だと自己判断すべきかもしれません。また、もしバテンテンションを緩めることでカムの返りを良くしたいと考えているとしたら、当該セイルは前記したように2分割でバテンテンションをかけるシステムなので、バックルとエンドの2カ所でテンションを調整する必要があります。どちらか一方だけ緩めてもダメだし、2分割テンションのバランスまで考えて調整する難しさがあるとこともお忘れなく。