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Q:T.Mさんからの質問 20年ぶりに中古のレースセイル(RS RACING EVO6)を購入しました。ニールのCK95-460で張ったのですが、カムがまったく返らないのにリーチはダルダルです。マストが古いとは言え、ここまでダメなのかと愕然としています。そしてマストの買替えが必須かと悩んでいます。ニールの指定マストを買えば問題無いのでしょうが、値段的にキビしいので、中古でどうにか張れるマストはありませんか。 |
A:たぶん質問者は、「どこどこのメーカーの」「何年モデルのマストなら大丈夫」との答えを期待しているのでしょうが、残念ながらそうした情報は持ち合わせていません。 EVOは推奨マストで張ってもカムが返りにくい傾向があります。その理由は、ウルトラカムというカムシステム。他のカムシステムは、バテンの先端が収まるポケットがあり、そこにカムがハマってるだけ。対してニール特有のウルトラカムは、大きなカムがセイルにある小さなレール上をスライドするシステムで、そのカムに「紐」で連動して装着された2センチほどのキャップにバテン先端が収まるという、言葉にするのも難しいシステム。 元々このシステムが採用された理由は、セイリング時はバテンテンションによってカムがマストに押し付けられることでドラフトを完璧に形成し、しかしセイルを返す時はカムがバテンを押し返すことで、セイル返しがしやすいというものでした。しかし残念ながらその複雑さが裏目に出てしまい、他の簡素なシステムと比べてカムが返りにくいという暗黒面に陥ってしまったようです。 推奨マストでさえそうなのですから、たぶん推奨マストよりも太いと思われるCK95という旧式のマストを使ったら尚更返らないのは当たり前。とは言え、マストを変えずともわずかな改善策は模索できます。 まず、カムの内側を覗き込んで(ウルトラカムは他と違ってカムを外すことができないのでとても確認しずらいですが)、バテンの先端が大きなカムに紐で連動した先端キャップにちゃんと収まっているかどうかを確認。バテン先端がキャップから外れてたり、キャップが割れてバテン先端が飛び出したりして、カムに「めりこんでいる」場合があるから。複雑なシステムだからこそそうしたトラブルに気付かずに「カムが返らない」と悩んでいる人も実際に多いので要チェックです。 もし先端キャップが破損しているなどが確認できたとしたら、セイルバッグのポケットに予備のキャップが入っているので(中古の場合は無いかも)、それと交換します。キャップには幾つか種類があるので、異なるものを取り付けないこと、またキャップに開いた複数穴の正しいところに、正しく紐を通すことも重要。この作業は個人でできることですが、システムが複雑で非常に難解なので、たぶん作業には半日以上を要することでしょう。 そうしたパーツ的なトラブルが無いことが確認できたら、次にすべきはバテンテンションを緩めるという行為。カムがどうにか返るまでバテンテンションを「これじゃテンションがまったくかかってないじゃん」というくらいまで徹底的に緩めます。実際のところ、推奨マストを使っている人達でさえその多くが、本来バテンポケット付近のシワが無くなるまでバテンテンションをかけるべきところを、カムの返りを尊重してバテンポケット周辺に山なりのシワが多数見えるほどテンション緩く使っています。ちなみに、一般論としてはバテンテンションがゆるゆるだとセイル性能は半減しますが、なぜかニールはそれでも高性能なので安心です。 そうした確認とチューニングでどうにかカムが返ればOKですが、もしそれでもカムがまったく返らないようなら、他のメーカーの安価なマストを探すのではなく推奨マストを検討すべきでしょう。しかしそれは高額でどうにも厳しいとしたら、もうひとつの選択肢としてセイルの再検討も視野に入れて良いのではないでしょうか。手持ちマストで張れる中古セイルの方がマストよりも安価に手に入る可能性は高そうです。 |