|
|
Q:D.Yさんからの質問 以前、すべてのセイルをノースで揃えていたのですが、古くなるたびに他ブランドのセイルに買い替えていたため、現在は様々なメーカーのセイルを使用しています。ただ、マストは純正を揃える資金に厳しいので昔のノースを継続使用していましたが、経年劣化で使用不可になり現在はGUN-SAILのマストに替えました。ところが、ノースのマストは細めであったため他ブランドのセイルを使ってもカムの返りなど気にならなかったものの、GUN-SAILのマストは若干太いのかカムの返りが悪く苦慮しています。そこで、純正以外の特に太めのマストを使用する場合のカムセイルのチューニングについて教えてください。 |
A:GUN-SAILのマストに関して。インターナショナルメーカーなのでその性能に疑いは無いとは思われますが、残念ながら使用経験無く、また流通量が少ないため情報が皆無でまったくわかりません。なので質問者の「ちょっと太いようだ」との情報だけを頼りに検証してみたいと思います。 マストが太めであることでカムの返りが悪くなることはよくあることです。だからとマストの性能に問題無いならば、そこから先はチューニングでカバーするしかありません。そのチューニングにおける要点は3つ。「ダウンをちょい『強め』」、「アウトをちょい『強め』」、「バテンテンションをちょい『弱め』」です。 ダウンを強めるほどにマストは「しなり」ます。するとカムがマストから「浮いた」状態になってカムが返りやすくなります。しかし闇雲にダウンを強めてもそれが「セイルが求めるダウンテンション」以上になってしまったら、そのセイルは必要以上にリーチが「ダラけて」、すなわちアンダーに対する性能を著しく失ってしまいます。またカムが「浮きすぎた」状態でドラフトが適正に形成されなくなる場合もあります。 アウトテンションを強めるほどに「横方向に引っ張られた」セイルは、カムをマストから離します。だからと言ってこれもダウンテンションと同じ。闇雲にアウトを引けば必要以上にドラフトが浅くなり、セイルが「スカッて」パワーが得られないなどの弊害が発生します。 これら2つの方法は、セイルに記載されている本来のテンションとは異なると思うべきでしょう。なのでダウンもアウトも(そのマストに合わせたテンションを)自分なりに模索して探す必要があります。リーチのテンション状態であったり、ドラフトの深さなどのさまざまな視覚情報や、実際のセイリングから得られる体感情報から適正と思われるテンションを自ら見つけ出す必要があるということです。 対して最後のバテンテンションは最も簡単で有効な手段になるでしょう。例えばニールのセイル。ウルトラカムという独自のカムシステムを有するニールでは、そのシステムがバテンテンションの度合いによってマストへの密着度が調整できるという理由により、他のセイルのようにバテンテンションを強くかけるとカムが返りにくくなる傾向があります(同時に後入れカムが入れにくい)。そのため多くの人は相当にテンションを弱めます。他のセイルがバテン上下のパネルにまったくシワが無いところまでテンションを強めるのに対して、シワがあっても仕方無しとする人さえいます。それを先例ととらえて多少大胆と思えるほどまでバテンテンションを緩めてみたとしたら、質問者の抱える問題は案外簡単に解決できるかもしれません。もちろん緩め具合も程度を見ながらであることは言うまでもありませんが。 純正のマスト、いわゆる推奨マストと呼ばれるマスト以外のものを使うのですから多少の追加作業は必要と覚悟した上で、ダウンテンションを強めてみる、アウトテンションを強めてみる、バテンテンションを弱めてみる、という3つの手法をさまざまに組み合わせ、時間をかけて実際に試して検証してみたならば、きっとチューニングの最終到着点へと辿り着けると思います。 |