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Q:H.Hさんからの質問 本栖湖に行くときなどドレンコック(エアバルブ)の着脱は必要なのでしょうか。人によって「絶対に外すべき」「外す必要なし」と意見さまざまで、どちらが正しいのかわかりません。 |
A:ボードは芯材である「空気を含む」発泡スチロールの周りを、ガラスクロスなどを樹脂で固めて硬質ウレタン材などをサンドイッチした堅いシェル(外皮)で覆って作られています。それは例えるなら密閉容器の中に空気を含むものが入れられた状態。日常生活に置き換えて例えるなら、タッパ容器の中に食材が入っているような感じです。それをレンジでチンしたと思ってください。密閉したままでは、高温になるほど容器が膨らむはず。それと同じように密閉したボードもまた、高温になると(芯材に含まれる空気が膨張して)膨らみ、連動して外皮も膨らみます。逆に急激に冷やすと容器がペコリとへこむ。これは温度差だけでなく、気圧差によっても同じような現象が起こります。 膨らんだりへこんだりを繰り返すと、接着していたはずの芯材とシェルが剥がれてしまいます。すると、ボトムにコブのような膨らみが残ったり、足元がペコペコするなどの「剥離」が生じます。その後、この剥離はその周辺に亀裂を生じ、すなわち板表面が壊れます。 そうした板の内部と、外部の温度差や気圧差を無くすために空気を「行き来」させるための穴がドレンコック。多くの場合ジョイントボックスの前や後に設置される太いネジ穴のそれを開けることで、膨らんだりへこんだり現象による剥離を起こさないように内外の温度差や気圧差を調節します。 こうした理論的視点から見れば、平地から高所の本栖湖に行く時は、その気圧差を考えてドレンコックを開けるのが正しいです。ただし完全にネジを取り外す必要はありません。緩めるだけで内外の空気が行き来するので、それだけで十分。 他にも夏場の日中、高温になる車中に板を保管している場合や、艇庫でもボードケースに入れて直射日光に当たる場所に保管しているなど、高温になる可能性のある場合はドレンを解放して保管するのが正しいです。 ここまでは杓子定規な話、ここからは実際の話をしましょう。 板にはピンホールと呼ばれる針の先よりも細い穴や、目に見えないわずかなヒビ割れなどがあります。新品ならそれは無いにしても、使い続けるほどにそうした穴やヒビが増えます。それはあまりに小さく、わずかなため、そこからの浸水程度は、5年使って、わずかにその周辺内部が「湿り気を持つ」くらい。もちろん板が重くなるほどの浸水量には遠く至りません。そのように水がほとんど行き来しない小さな穴やヒビ割れでも、空気は景気良く行き来します。すなわちドレンコックを解放しなくても、常に板は呼吸できる状態ということ。これが「ドレンを開ける必要なし」の所以です。実際に「ドレンなんて開けなくて平気だよ」という人の板は、こうして呼吸できているから剥離という問題を抱えずにいるのだと思います。ちなみに私の板もこれに該当するので、本栖湖に行く際にドレンを開けなくても大丈夫です。 |