ブーム長の概念

QY.Tさんからの質問

表記されているブーム長とは、ブームをどの高さにセットしたときの数値なのでしょうか。

A実際のところそれを明確に示したメーカーはありません。聞いても明確な答えをくれたメーカーもありません。ただ今までの経験値から言えば、多分、ですがカットオフ(ブーム取り付けのためにスリーブが切り取られた部分)の中央高さにセットしたときだろうと、私自身は想像しています(実際にはメーカーによってその解釈に違いがあるかもしれません)。

スリーブに取り付け高さが表記印刷されたセイルもありますが、表記ブーム長が「取り付け高さ『何センチ』の場合の数値」と示されたこともないので、スリーブの印刷表記は単なる取り付け高さの目安に過ぎないと考えるべきでしょう。

カットオフの中央部にセットしたときと、最上部もしくは最下部にセットしたときでは、ブーム長には1センチ以上の差が出ます。それは小さいようで大きな差です。それを考慮した上で、カットオフ中央部に指定値通りのブーム長でセットし、そのビジュアル(ドラフトの深さやリーチの波打ち具合など)を視覚的情報としてインプットし、自分なりの高さにセットし直した後に、そのビジュアルに合った状態にチューニングすることが必要だと思います。

ダウンも同様ですが、ブーム長もまた数値では表し切れないバリエーションがあります。それは乗り手の体格差の場合もあるし、そのセイルを使うだろう想定風域の差の場合もあるし、使用する板の違いにもよります。なので自分に最適なブーム長を探すには、まさしく「探す」という作業が必要。そのためには、例えばその日、一度セッティングしたらそのまま終日乗り続けるのではなく、「もっと私に最適なブーム長があるのでは?」と絶えず疑問符を投げかけて、チャンスを探して色々と試してみること。色々とチューニングするのは面倒ではありますが、「無精は大損」と心得て行動していれば、きっと自分に最高のブーム長が見つかるはずです。

ちなみに私はスラロームの場合、「引きしろ」のために少しブームを長くセットしてアウトカニンガムを使うことで、「オーバーなら引きアンダーなら緩め」「下りなら風をよりセイルに『はらめる』ように深くすべく緩め、上りならより風に鋭く切り込めるように浅くすべく引き」「寝不足など体調がイマイチのときは体力補填のため楽に乗れるように少し引き、夏場で睡眠十分な体力満載のときは少し緩めてパワフルに」と走る向きやわずかな風速変化、体調などで、セイリング時間正味1時間として5〜6回はアウトテンションを替えます。

カニンガムが付いていないウェイブでは、逗子の場合はインサイドがガスティーだという理由で出艇時は意識的に少し緩めに、風が通るアウトサイドに出たら少し引いてベストな状態に、さらに大崎で風向良くインサイドまで風が通っているときはそのままで、しかしオンショア気味でインサイドがガスティーなときは再び少し緩めます。これを一度、セイルを倒して海に浸かってチューニングしなおします。そのくらいアウトチューニングというのは今のセイルの命であり必須項目であり、それをするかしないかでその日一日の楽しさが大きく左右されるということを、ぜひとも覚えておいてもらいたいと思います。