セイルセッティング基本編(ローテイトを参考に)

QR.Kさんからの質問

セイルの基本的なセッティングについて。セイルを表記数値通りにセットしても、下2本のバテンがマストの向こう側にハマりこんで返りません。マストは推奨マストを使用しています。また、数値以上にエクステンションを伸ばしてダウンを引かないとリーチがタイトでピンと張って見えます。このことから、問題がダウンやアウトのセッティングに問題があるのか、それともバテンテンションに問題があるのか、もしくはそもそも微風では返らないものなのか、教えてください。

Aまず、ダウンとアウトの基本的なセッティングについて。

ダウンの表記(LUFF)はマスト長とエクステンションの長さの合計です。例えばLUFF442センチと記載されているなら、430のマストにエクステンション12センチでピッタリに思えますが、LUFF442とはダウンプーリー(滑車)の下縁が442まで引くということなので、実際にはそのエクステンションでは不足。なぜならジョイント側の滑車やクリートまで引き切るのは不可能だからです。そこには必ずアソビが生じるので、この例の場合はエクステンションを14センチにセットし(大抵のエクステンションは2センチ刻みで伸ばすから)、ダウンプーリーの下縁とジョイント側の滑車の間に2センチ弱の余裕を持たせることで初めて数値通りまで引き切ることができることを知っておきましょう。

ダウンプーリーをジョイント側滑車まで(下の黒い部分)までピッタリ引き切るのは無理。シートには余白が必要でその分を考慮してエクステンションを伸ばさないと数値通りまでダウンは引けない。Photo by Tetsuya Satomura

BOOMの数値は単純にブームを伸ばす寸法。ブームのベース長さにエンドを伸ばした数値で、それにセットしたら最後まで引き切ります。

こうして数値通りにセットしてもバテンがマストの向こう側に深く入り込んでいたとしたら、しかも風を受けてもバテンがマストを回り込んで反対側に返ってくれないとしたら(ローテイトしないとしたら)、まずはアウトを引いてみます。それなりに手応えのある風の時に浜でセイルを立て、バンッとセイルに風を受けてバテンが反対側に返るところまで引いてみましょう。

手応えをまったく感じないような微風では返りにくいのが常なので、それなりに風が吹いている時に試すこと。返りやすくするためには、もしかしたらブームを2センチ、4センチと伸ばす必要があるかも。

アウトを引くとリーチはアウトに向けて強く引っ張られて今までよりもタイトに(張りがある状態に)なるという習性があります。なのでアウトを引いたことで、もし写真のように波打ちが無くなってしまったらダウンを追加。

たぶん多くのセイルは下の写真のようなリーチ状態が適正なので、写真のようにリーチテンションが抜けるまでダウンテンションを追加します。必要に応じてジョイントを伸ばすことも忘れずに、です。

ダウンを強めるとバテンの入り込みが浅くなるという習性もあります。すなわちダウンを引くほどにバテンが返りやすくなるので、もしダウンを追加したなら今度はアウトを徐々に緩めて、バテンがちょうど返るギリギリのところを探ります。アウトの引き過ぎはセイルの安定感を奪うので、引き過ぎにならないようにバテンの返り具合を目安に再調整するということです。これでおおよそのセッティングが完成です。

バテンが返りにくいまま(ローテイトしにくいまま)セイルを使い続けると、スリーブ内にあるバテン先端の止めパーツがマストと擦れて穴が開き、バテンが突き抜けてしまいます。そうしたトラブルを招かないためにも正しいセッティングが必要です。

最後にバテンテンション。このコーナーでも幾度と無く解説したことですが、強すぎるバテンテンションはイケません。特にノーカムセイルの場合は、決して強くかけすぎないように、あくまでバテンポケット周辺のシワが無くなるくらいが限度。一番下のバテン(フットバテン)に関しては、少しシワが残るくらいでも良いくらいです。ノーカムのフットバテンに関しては、少しシワがあるくらい緩めでも性能に大きく影響しないので安心だし、それの方が返りやすく、先端の突き抜けなどのトラブルも回避できるからです。