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Q:T.Oさんからの質問 セバーンのTURBO8.6を使っています。セッティング時に下から2番目のバテンが反対に反ってしまいます。風を入れれば大丈夫なのですが、バテンテンションを緩めても反りが治らず違和感を感じます。何か修理が必要な要件などあるのでしょうか。 |
A:写真もお送りいただいているので、それを見ながら検証してみましょう。
セバーン固有のトラブルというのがあります。それは写真1の丸部分に見られます。写真1の丸部分を拡大したのが写真2。この矢印の部分を要チェックです。 バテンポケットの上下、写真では黒いバテンポケットの上下に見えるグレーのテープと透明フィルムの境目。この部分の透明フィルムがバテンポケットから「引っ張り出されたように」見えたらそれは破損の証拠。セバーンに限らず多くのセイルは上下のパネルをバテンポケット(ここでは黒い部分)の中で縫い合わせてあるのですが、セバーンではこの縫い合わせの補強が無いために、縫い合わせの糸がバテンとの「擦れ」で切れてしまい、パネルがダウンテンションに耐え切れずに上のパネルは上に、下のパネルは下にバテンポケット内から引き出させるように切れてきます。すると、それはちょうどバテンテンションが不足しているかのごとく見えるため、必然、バテンテンションをさらにかけることになり、それがさらにパネルの切れを助長します。その繰り返しによってこの部分がちょうど「コブ」のように深くなり、結果としてバテンの返りが阻害されます。この場合、バテンテンションを緩めれば返りは改善されますが、そこまでバテンテンションを緩めると、たぶんバテンポケットの上下には驚くほどの縦ジワができてしまいます。その改善方法は、バテンの返りとシワのでき具合の妥協点を見つけるしかありません。 もうひとつのトラブルが写真2のAとBの部分。当該セイルのマストスリーブは、パネルとの縫い合わせがバテンポケットの上下で途切れています(バテンポケットの部分だけ縫い合わせがなく「口が開いて」いる)。その縫いの途切れ目の上下であるAもしくはBの部分の本体パネル側(写真A、Bの矢印部)に、もし数ミリの切れが見えたとしたら、それはスリーブ内部のラフパネルが断裂している証拠です。 この場合、外見上は何等問題無く見えても、スリーブ内の最も力のかかるセイルの前縁パネルが大きく切れているため、ダウンテンションが正しくセイル全体に行き渡らず、結果、バテンの返りなどに支障をもたらします。なのでもちろんすぐに修理が必要。そのまま使い続けるとダウンテンションにセイルが耐え切れず、近い将来、バテンポケットに添ってセイルが上下に二分断されるかのごとく大きく切れてしまいます。写真を見る限り、質問者のセイルにはスリーブの開口部に切れが見えませんが、もっと凝視したら、もしかしたらわずかな切れが発見できるかもしれないので再チェックしてみてください。 質問者の場合、写真から確実に判断できるのは写真2に見える矢印部分の「引っ張り出され」による切れ。破損そのものは大きくないようですが、少なくともそれは、過去、もしくは現在も継続的に、バテンテンション過多であるだろうことを物語るので、バテンテンションを少し緩めるというのは良い方法です。少なくともその行為によってこれ以上の破損を回避できるでしょう。 にもかかわらずバテンの反りが正常でないということなので、あと考えられるのはバテン本体の問題。その確認のために、バテンを一度抜いてみましょう。もしかしたらバテンのドラフト部(一番曲がるところ)がササクレたようになっているかもしれません。さらにひどければ、折れかけているか、すでに先端が折れてしまっているかもしれません。後者の場合はバテンの交換が必須ですが、前者の場合はササクレを補強すれば改善される可能性があります。その補強方法は、ビニールテープを螺旋状にササクレ部に巻き付けるという方法です。 さらに加えて、バテンにササクレなどが見えないまでも、抜いたバテンに曲がった癖がついているかもしれません。ササクレを補強した場合も、曲がった癖がついている場合も共に、バテンは片側にはカーブを描きやすく反対側にはカーブを描きにくくなっているので、その場合はバテンを「裏返して」バテンポケットに再挿入します。これでバテンの「曲がり癖」が裏返ったことになり、セッティング時の変な反りが改善される可能性が高まります。 いずれにしても、質問の原因には幾つかの要因が考えられるので、それらをひとつずつ確認していくこと。それでも原因が分からない場合は、専門家に見てもらうのが、やっぱり一番無難な方法になるでしょう。 |