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Q:J.Nさんからの質問 ノースセイルのVOODOO(2000年モデル)をFIBERSPARのTIDAL WAVEでセットしています。第3バテンまでがルーズで、フット部はドラフトが深く、ブーム上部がつっぱったようになっているのですが、セッティングとしてはこんな状態で良いのでしょうか?それとも、やはりセイルはそのメーカーのマストとの組み合わせでないと合わないのでしょうか? |
A:セイルとマストとの相性で良く言われるのが推奨マストと呼ばれるものです。ようするに、ニールにはニールマスト、ノースにはノースマスト、ガストラにはファイバースパーでないとキレイにセッティングできないよ、というものです。その理由はマストのベンド率(曲がり具合)に違いがあり、各々のセイルはそれぞれのベンドに合わせて作られているからです。 しかし実際には、そうしたメーカーごとのマストの違いは、ここ2年ほど小さくなっています。すなわちどのマスト(特にニール、ノース、ファイバースパーの3大ブランド)もベンド率が似通ってきているということ。特にウェイブ系マストの場合、その違いは「ちゃんとセッティングできない」とか「セイル性能が全く発揮しない」ということはなく、チューニングで解消できる範囲内の違いになったと言えます。 とは言っても、どれでセットしてもまったく同じ性能が得られるということではありません。もちろん100%を求めるならば推奨マストを選ぶに越したことはありません。でも、90%なら推奨マストでなくても十分にカバーできるということ。そして多くの人にとって90%の性能というのは、ウインドを楽しむのに十分な性能だと言えます。しかし90%の性能を引き出すにも、チューニングが必要ですよ、ということです。 そこで、1枚のセイルに対して、違うマストを使うときのチューニングに関して実際に試してみました。質問は2000年のVOODOOですが、入手不可なのでここでは同じノースセイルのDISCOを例にしています。サイズは5.9なので、小さなサイズよりも、よりその違いがわかりやすいと思います。引き加減の数値は異なりますが、基本的なチューニング方法やチューニングの見方、考え方にはまったく違いが無いので参考にしてください。 DISCO5.9のセッティング表示はBOOM 182-185、LUFF 453-456です。私的には少しアウトを引きめにして後ろ手にかかるパワーを軽くした方が好きなので、BOOM 184、LUFF 454ですべてセットしてみました。その違いを比較してみましょう。 まずはドラフトについて。XCELLERATOR60ともうひとつの推奨マストであるNORTHSAILS XC VIPER75、それとFIBERSPAR TIDALWAVEの同サイズマストでセットした違いは以下の通り。写真は上からXCELLERATOR60(以下XC60)、XC VIPER75(以下XC75)、TIDALWAVE(以下TIDAL)の順です。 |
このサイズの写真では非常にわかりにくいかもしれないが、XC60のドラフトよりもXC75でセットした方が、一番下のバテンカーブが微妙に深く、ドラフトが前に寄っている。これは同じ硬度であるが、カーボン含有率がXC60が60%であるのに対して、XC75が75%であり、それによって硬さに違いが生じて(XC75の方が硬い)いるから。しかしブーム上部のバテン部分のカーブを見ると違いはほとんどなく、すなわちXC75だとブーム下部が深くセットできる、と言える。ブーム下部はガスティーにおけるセイルの安定度、及びローエンドパワー(アンダーの時の安定感)を司っているので、結果としてXC75だとアンダーでもバランスが取りやすいとなる。しかし反面でドラフトが深いということはセイルが返しにくいということでもあり、だから一番下のバテンテンションを若干弛めてそれを解消させる。 TIDALでセットした場合、一番下とその上のバテンカーブが直線的でドラフトが浅くなる。これはマスト下半分が比較して柔らかいということで、その分、アンダーでの安定感は失われる。しかしそれは他マストとまったくおなじダウンとアウトテンションであった場合の話で、安定感を生むにはもう少し深いドラフトを作ればいいわけだから、アウトを若干(1〜1.5センチくらい)弛めてやればいい。質問者の場合も、ブーム上部がつっぱったように、とあるので、TIDALでセットするにはアウトを引きすぎている可能性があるのでは? |
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これはリーチの比較。同様に上からXC60、XC75、TIDALの順で並べてある。 XC60の場合、リーチがトップに向けて穏やかに下がっている。対してXC75はトップ部分が少し極端にルーズに下がって見える。これもまたマストのカーボン含有率が生み出す硬さの違いによるもの。見た目はXC60の方がスムーズで的確に見えるが、ブームエンドを持ち上げたときに、トップに向けて徐々に下がって見えるので(スピードのためのセッティング参照)、リーチの機能としては稼働してくれるはずで、スピードが出ないとか使いにくいことは無いはず。 下のTIDALだと、全体的にピンと張りのある状態に見える。しかしそれでもやはりリーチはトップに向けてしっかりと下がっているので、これもまた風に対するリーチの稼働は問題ないと言える。ただしリーチの開きが全体的に少ないので、風速の変化に対するリーチの稼働状態がやや鈍重になると予想できる。それを解消するには、ダウンをより引く、もしくはアウトを弛めるという2つの方法があり、ドラフトを考え合わせれば、若干アウトを弛めることで解消すべきだと想像できる。あとは、それを実際に試してさらに細かいチューニングだ。 |
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