アップホールラインを持って走る

QJ.Fさんからの質問

PWAトルコ大会のスラローム決勝で、フェニアン・メイナードがアップホールラインを持って走っていました。これはどんな効果があるのでしょうか。

Aフェニアンだけでなく、ジェスパーなど他のPWAレーサーや、国内では山田プロや国枝プロもアップホールラインを掴んで走ることがあります。これは特に、アンダーの、やや上り気味のときに効果があるようです。

写真は2008年ジャパンサーキット第3戦での山田プロ

アップホールラインを持つと、「よりマストが立つ」「セイルのアフターレイキし過ぎを解消しやすい」というメリットがあります。前腕をどんなに伸ばしてもマストが立つ限界値があります。フロントワイドなブームを使えば立ちやすくはありますが、それでも限界は存在します。その限界を超えてマストを立てるのが、アップホールラインを持つという裏技。浅野プロが前の手の指先第1関節だけでブームを引っ掛けて走るのも、よりマストを立てるという一連の流れの中にあるという意味で同種の技術と言えるでしょう。

マストを立てるほど風の取り入れ口が広がってプレーニング持続性が高まり、スピードも伸びやすくなります。同時にアフターレイキ過多によるスピードロスや失速を防ぎやすくなります。後者はクローズでより高まる効果です。

しかしこれらはあくまでアンダー時における話。吹いている中でこれを行ったら逆効果となってセイルのトリムを損なうことになるでしょうし、そもそも吹いた中ではそこまで無理にマストを立てる必要も薄いからです。

この裏技は、誰にでも効果があるわけではありません。前の手でアップホールラインを持つには、前の手を離してもハーネスワークだけでセイルをトリムし続けることができるだけの技量を必要とします。それ以前の技量の人が試したとしても、セイルトリムが不安定になるだけでしょう。すなわちこの裏技は、すでにすべきことができる人に、最後のプラスアルファを与えるための特殊な技術だと言えるでしょう。