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Q:Hさんからの質問 最近、GPSを付けて乗るようになったのですが、速く走るにはアビームよりも目一杯下らせた方が良いのでしょうか。下らせることになかなか抵抗があり中途半端になってしまいますが、下った方が記録も出やすいのでしょうか。ウネリに突き刺さらないように、前に飛ばされないように下っているとフィンが抜けてしまったりして記録もイマイチで50キロを越えることができません。 |
A:もちろん下らせた方が速いです。下らせると、質問にもあるように、ノーズが突き刺さる、前に飛ばされる、スピンアウトするなどの恐怖が伴いますが、この恐怖こそがスピードの裏返し。アビームで恐怖が少ないというのは、それだけスピードが出ていないという証拠なのです。 風速や海面のウネリの状況などにも大きく左右されますが、基本的にはクォーターくらいに下らせるのがもっともスピードが伸びます。このときどうしても「腰が引けて」しまいがちで、するとまずスピンアウトしやすくなり、ちょっと無理をすると前に飛ばされたりノーズが刺さるのは通常の出来事。怖くてセイルを開いてしまうことも多々あるでしょう。 これらをコントロールする能力を高め、より「思いっきり」走れるようになることがスピード記録を伸ばすための必須条件だと言えるでしょう。下らせて、もちろんセイルは限界まで引き込む。恐怖を向こうに回して、恐怖に打ち勝ち、ときとして精神的にキレた状態になる。自分の体重だけではセイルが支えきれないと思うなら、オモリを背負って無理にでも踏ん張る。さまざまな努力の先に記録は存在します。 こうした恐怖に打ち勝つには、繰り返しの練習が必要です。良く言われるのは、そのスピードに慣れていないと視野が狭まるという現象。車の運転でもそうですが、慣れないスピードでは視野が狭くなり状況判断やそれに伴う動作が敏速に行えなくなります。しかしスピードに慣れてくると視野が広くなり状況判断も素早く、動作も敏速になります。野球選手が「ボールが止まって見えるようになる」などというのは、この部類に属するでしょう。ここに乗り手のスピードに対する成長があるわけです。下らせながらも腰が引けること無く板にどっしりと乗れ、前に飛ばされそうなパワーを紙一重で支え切り、突き刺さりそうなノーズを瞬時な判断力で操作する。これらの総合力が最高速を大きく引き上げるということです。 これらのリスクは平水面であるほど減少します。ウネリが無ければノーズが突き刺さるリスクが大幅に減少するといった具合に。なので平水面であれば単純に最高速が伸びるというのは周知の事実。本栖湖であったり、御前崎であっても防波堤に囲まれた平水面でスピード競技が行われるのはこうした事実に基づいています。質問者も、ノーズが突き刺さりにくい平水面でトライしたなら、それだけで今より記録が伸びるかもしれません。もちろん、ノーズが突き刺さりにくいように少しジョイントを後ろにするなどの繊細なチューニングを行った上で、です。 自己の能力を高めて下って走れるようになるのは今後の練習。合わせて、現状でも下って怖くない風速や海面状況を選んで最速計測するというコンディションの選び方もまた(ちょっとズルいかもしれないけど)50キロオーバーを記録するには良いアイデアとなるでしょう。50キロオーバーの記録というのは、誰にとってもそうですが、それほど遠い現実では無いと思います。 |
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