波の巻かれ方

QK.Aさんからの質問

波の巻かれ方について教えてください。「セイルと体がボードより沖側でマストを押さえる」のが基本と思いますが、沈の仕方によっては体よりも道具が沖側にあったりして、どう対処すれば良いのかわかりません。ブームエンドを掴んだり、後ろのストラップを掴んでも良いものなのか、それは危険なのか?も合わせて教えてください。

A基本は質問内にある通りです。ただし波が大きなときは、それだけでは不足。マストトップを押し沈めるようにして、「道具をなるべく波の下に通してやる」ことが必要。波の上はパワー大ですが、波の下はパワーが小さくなります。これはサーフィンで、波の上を越えようとすると巻かれて、ドルフィンスルーで波の下を越えようとすると大丈夫なことからもわかるでしょう。

しかしそれをやろうにも、マストトップが波側に向いてコケるとは限りません。マストトップを波に向けようとしても間に合わない場合もあるでしょう。そうしたときは、方法論よりも、まずは危機回避について考えるべきです。そこでまずは、どんな行為や場面が危険なのか考えてみましょう。

体が危険に陥るケース

1)マストトップのアジャスタブルベルトやブームエンドに手が挟まって手首や腕、肩が捻られる。

2)ボード、特にフィンが体に当たる。

道具が危険に陥るケース

3)マストトップが海底に突き刺さってマストが折れる。(マストトップが岸に向いているとき)

4)セイル面に波がかぶさってセイルが破ける(マストトップが沖などを向いているとき)。

実際に巻かれる場面でどうすれば良いのかわからないときは、これらの危険パターンを回避することを考えます。もし危機回避できそうにない、もしくはわからないときは道具放棄、これが波に巻かれるときの大前提です。

とは言え、できれば道具は放棄したくないもの。そこでケースバイケースの巻かれ方について考えてみましょう。まずは基本通りにマストトップが沖を向いて、体よりもボードが岸側にあるとき。セイルがアジャスタブルトップの場合はベルトに手が挟まらないようにベルトごとマストを掴み、またアジャスタブルでない場合はスリーブトップをマストごと掴んでタイミングを合わせて波の下に押し入れます。これで4)のトラブルも相当数回避しやすくなるはず。それでもセイルが破けてしまうときがありますが、それは成す術無しと諦めましょう。

沖側から、体、ボード、セイル、と並んだ場合は、後ろストラップを持ってタイミングを合わせてテイルを波の下に押し沈めます。波がボードとセイルの上を通り抜けてくれれば3)のトラブルも回避できるでしょう。それでも浅瀬ではマストトップが海底に突き刺さることもあるでしょう。そのときはトップを支点にボードがグ〜ッと持ち上げられるので、そうなってしまったら踏ん張らずに手を離します。頑張りすぎると余計にマストが折れますが、波に道具を巻かれさせてやればそれよりも折れる可能性は低くなります。ただし道具は流されますが。

ボードが体よりも波側にあって目前に波が迫っているときは、巻かれたボードが体に当たらないように、潜るか、避けます。このとき道具はどこも持たずに放棄します。回り込んだり、下を潜って体が道具よりも波側に行けるなら、マストやストラップを掴むことで道具を流さずに済む場面もあるでしょうが、無理すると最も怪我をしやすい場面なので無理は禁物です。

ブームエンドは掴むべきではありません。ブームエンドを掴むようなシチュエーションはセイルが波に大きく巻かれる場面であることが多いので、ヘタをすると脱臼などの大きな怪我を招きかねないから。ブームエンドを掴むのは波が小さくてパワーの無いときだけ、と心得ましょう。

これらの方法で目前の波をやり過ごしたら、次の波との間に素早くセイルとボードを的確な方向に回転させてウォータースタートを行います。ウォータースタートが間に合わなければ再びトラブルを最小に抑えながら波に巻かれる、の繰り返し。ウォータースタートの完成まで至らなくても、セイルが海面から上がってボードが波の方を向いた「レディーポジション」になっているなら、ブームを握る両腕でボードを波に向けて押し出します。運が良ければそれで波をひとつ乗り越えることもできるので、ウォーター成功までの時間を稼げます。いずれにしても、(特に波が大きなときは)わずかな時間で素早くウォーターを成功する必要があるので、波の小さなときや平水面で練習を積み重ねて技術向上を心がけてください。