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Q:T.Kさんからの質問 超微風の上りについて。ハーネスがどうにかかけられるような微風時、効率よく上れません。板はセンターボード無しの133リッターもしくは112リッター。周りを見ると皆さんアンヒールさせているようですが、私は昔イムコに乗っていたこともあり、そんな時はヒールさせるのでは?と思ってしまいます。実際のところ微風においてスラロームボードで上りたいと思ったときはどちらが正解なのでしょうか。 |
A:微風時(=低速時)に速く走る(=良く上る)ためには、水線長が長い方が効率的という公式があります。すなわち微風では、より長くてより細いものの方が速いということ。だから全長380センチのイムコではヒールさせることで風上側を水面から上げて風下側だけを「細く」接水させることで水線長を長くするのが効果的。しかしノンダガーのスラロームボードでヒールさせると、ラフが強すぎてまっすぐ走れないという避けられない現実があります。ヒールさせたらラフしすぎてまともに走れないのですから、残された方法は、フラットのまま走るかアンヒールか、の選択しかありません。 ショート&ワイドという今の板は、横幅が広いほど水面との「面浮力」が強いのが利点。水面下に沈んだ容積と比重とで計算されるはずの浮力ですが、横幅が広い=水面に接する「面」が広いと、ボトム面と水面との間に空気の層が挟まれるなど(と私的には理解してますが学問上の詳しいことまではわかりません)、たぶんさまざまな要因が加わることで、計算式から導き出される単純な答えとは異なる体感的な浮力を感じます。それはイメージとして感じるだけでなく、おそらく実際にも水面から浮きやすい、もしくは沈みにくいのだと思われ、だからこそ弱風でも板がリフトしてプレーニングが促進されやすいと多くの人に理解されています。 この面浮力についてさらに詳しく。よく面浮力が強いと表現されることがありますが、これは例えるなら海水浴でウッカリ手を離してしまった大きな浮き輪が、手から離れた途端に風に流されて、取り戻そうと泳いでも追いつけないほど想像以上に速く風に流されて行ってしまうような現象を生み出します。すなわち、よく浮く=リフトしやすいというメリットは、微風においては、風下に流されやすい=上らせにくい、というデメリットと隣り合わせだと理解できます。 そうした長短所を合せ持つ面浮力の強い「今の」板をより上らせるには、風下に流されにくいように何かしら水面に「引っかかり」を作ってやるのが効果的で、そのための行為がアンヒール。アンヒールさせることで風上側のレイルやエッジを水面に噛ませることで引っかかりを作ってやることで、風下への流され度合いを軽減して少しでも効率良く上ろうという行為。ただしここで言うアンヒールとは、イムコのヒールで風下側レイルを深く沈めるというような大きな動作ではなく、フラットと比べればわずかに風上側が沈んでいるかな?程度の軽微な度合い。イムコのヒールのつもりで、その逆バージョンで深くインレイルと沈めたとしたら、それもまた今の板で真っすぐ走るのは困難になること確実ですから。 ショートボードはヒールさせるとラフが強すぎてまっすぐ走れない。それはセイルでどんなに操作しようにもどうにもならずラフして止まってしまうくらいに。でもちょっとのアンヒールによって引き起こされるベアは、わずかにブームエンドを下げるなどの操作で対処できます。イムコならアンヒールによるベアはセイルトリムで対処できないほどの大きな動きですが、ショートボードのそれはイムコとは比べられないほど簡単。これもまたアンヒールが走りのアイテムとして利用される理由でもあります。 余談をひとつ。タブーのフリーライドには、ロケットとロケットプラスの2種があります。その中の(質問者に合致しそうな)120リッター台を比較してみると、ロケットプラスの123リッターは横幅77センチ、対するロケット125リッターは75.5センチ。すなわちロケットプラスよりもロケットの方が(同ボリュームで)横幅が狭い=細いということ。そして細めのロケットの方が面浮力に弱いため微風走行時は(エッジが少し沈む分だけそれが横流れを防ぎ抵抗となり)上りやすく、対して幅が広いロケットプラスは面浮力が強くてリフトしやすいため横流れが大きくなる。しかしプレーニングへの加速力やブローホールで失速せずに走り続ける能力はリフト力の強いロケットプラスの方が良いので、ロケットプラスの方が性能的にはよりスラロームチック。こうした理由によって、例えば相模湾側の湘南地区などの、夏はオンショアで冬はオフショアで共に「上る」行為が必要なゲレンデでは、横幅が狭くて上りやすいロケットの方が人気だという傾向があり、しかしサイドショアが多い津久井浜などでは、上る行為がそれほどは重要視されないためより速さを期待できるロケットプラスが好まれるという傾向があります。 こうした一般論にも考えを巡らせれば、質問者が乗る板は横幅が広いタイプなのでは?と思われます。その場合は(説明したように)細身の板よりも横流れが大きいのだから、より意識して横流れを防ぐ必要あり。その方法がアンヒールであり、それは言うなれば苦肉の策ということです。 ワイドな板は上りにくい。とは言え、ぜんぜん上らないというわけではありません。上らせるための「コツ」や、上らせるためのテクニックは多数存在するので(みんなそうして上らせている)、それに関しては過去歴で幾つか解説しているので拾い読みして参考にしてください。 |