ストラップワーク

QT.Kさんからの質問

ストラップワークに関して。プレーニング中、私はこれまでストラップに足を入れても板を「踏んづけて」いました。しかし当HPのバックナンバーを参考につま先を上げるようにしてからスピンアウトも減り、楽に乗れて且つ走りも良くなりました。そこであらためてストラップワークに関して詳しく教えてください。

A一部わかりにくい表現があったと思ったので、11月29日に掲載したものをリライトして再掲載します。

ウインドの走りは、クローズ、アビーム、(クォーターなどの)下り、の3つに分類できます。それぞれの重心位置は、アビームでは前後足のおおよそ中間(膝を曲げた後ろ足に重心が乗ると勘違いしてる人がいるが、それだとアビームよりも意図せず下る)、クローズではそれよりも前足に重心が近く、下りでは後ろ足に重心が近く、が基本。そして、そのどれにおいても前足のつま先は「上げ」ます。

プレーニングにおいて前足は「板の方向性を一定に保つ」役割を担います。もしストラップの中で「前足が遊んでいたら」足と板との一体感が薄まるため、ボードは海面状況に強く影響を受けて(ウネリで跳ねたら大きく板がラフするなどして)しまいます。それを阻止するため、前足はストラップに「強く(深く)」入れて密着度を高め、つま先を上げることでさらに固定して板の方向性を一定に保ちます。そのためには、つま先を上げた時に親指の付け根がストラップのちょうど向こう側に引っかかる程度にストラップの深さを調整することが必要。

つま先を上げると連動して踵が下がり、足首は曲がり気味になります(違う表現だとストラップを足の甲で持ち上げるような感覚)。対してつま先を下げると踵が上がり足首は伸び気味に。両者の違いは前足への負担の違いにつながります。足首は、伸ばすほどにスネと膝の上の筋肉に負担がかかり、板を抑えるパワーが欠落するだけでなく筋肉疲労で長時間のプレーニングができなくなることも。そうした負担を軽減するためにも、前足の「つま先を上げ」「足首の曲げ率を高める」ことが重要。

このように、前足は「しっかり入れて」「つま先を上げて」「ストラップと隙間無く一体に」。これはさほど難解な作業ではないでしょう。しかし後ろ足は、それほど単純ではありません。

前足が「固定」のためのストラップなのに対して、後ろ足は「使う」ためのストラップ。

後ろ足のストラップワークに関しては、上り、アビーム、下り、それぞれに違いがあるので、まずは基本のアビームから。

アビームでの後ろ足はストラップに垂直に入れます。これは、当たり前にストラップに足を入れたときの状態。このとき「つま先を上げれば踵で風上レイルを抑え込む力が強まってヒールを抑える」「つま先を下げれば踵で風上レイルを抑え込む力が弱まってヒールしやすくなる」。この関係において、風が強いときはヒールを抑えたいのでつま先を上げ、逆にアンダーではアンヒールしたくないのでつま先を下げてやる、となります。このように状況に合わせてつま先を上げ下げすることで板の傾き(ヒールやアンヒール)をコントロールします。

重心が前足に近い上りでは、後ろ足はストラップに垂直ではなく、ストラップの中で「つま先を後ろに、踵を前に」捻って入れます。それはちょうどストラップの前側に「土踏まず」が密着する感じ。さらにアビームよりも少し浅めに入れることで、より踵をレイルに強く「かけて」やります。なぜならクローズではアビームよりも板がヒールしやすいから。そして、つま先を上げ、踵をレイルにしっかりと乗せることで、ストラップとの密着度を最大限に高める。それが疎かだと、板がウネリで跳ねるなどの少しの振動で、ストラップの中に足がズルッと深く入り込んでしまい、その瞬間に上り角度が大きく失われます。

上りのフォーム。前膝が曲がり気味で重心は前足寄り。後ろ足がストラップの中で「踵が前に」捻られているのがわかるだろうか。

重心が強く後ろ足に乗る下りでは、後ろ足の膝はアビームよりも深く曲がります。このとき、後ろ足はストラップに垂直ではなく、ストラップの中で「つま先を前に、踵を後ろに」捻って入れます。さらにアビームよりも少し深く入れることで、より踵からプレッシャーを「抜いて」やります。そして、つま先を下げる。そうすることでさらにレイルを抑え込む力が減少し、結果、アンヒールを完全解消。ジャイブではインレイルを沈めますよね。アンヒールはその逆で、自分の乗る側が沈むということ。向こう側のレイルを沈めれば「ジャイブ=風下に向かう」のだから、その逆は風上に舵を切ってしまう。ようするにアンヒールとは、下る向きではなく上る向きに板が曲がろうとしてしまうということ。だから下るにはアンヒールの完全阻止が必須で、「深く入れて、つま先を下げて踵からプレッシャーを抜く」というのは、そのためのストラップワークということです。

このように後ろ足のストラップワークは、足の入れる向き、入れる深さ、つま先の上げ下げとそれに連動する足首の伸び具合などのさまざまな要素を、走る向きや、風速、海面状況などによって「使い分けて」やる必要があります。