スピンアウト

QY.Yさんからの質問

100リッターの板と6.4を使うウインド歴1年半の学生です。クロスオンショアでフィンが頻繁に抜けてスピンアウトして悩んでいます。特に沖に向かう際、斜め風上側から小波を受けると小さくジャンプしてしまい、その直後は成す術無くスピンアウト。その原因として考えられる事は。また解消方法があれば教えてください。

Aスピンアウトに関しては、コラムのページ(スピンアウト)でマニアックに解説しているのでそちらをご覧ください。とは言え、ウインド歴1年半の質問者にとっては、マニアックな内容よりも今すぐ使える身近な解説が必要と思えるので、以下に(たぶん)質問者が直面している原因と、その解消方法について解説しておきます。実際には下記ほど単純ではありませんが、ここではあえて単純に考えることで出来るだけわかりやすく解説したいと思います。

クロスオンショアで沖に向かうということは、たぶん例外無く「上って」いるはず。限界ギリギリのクローズで上っていないにしても、少なくともアビームよりも上っていることでしょう。そうして上っている時は、体は強くセイルに寄りかかろうとします。同時に後ろ足でフィンを強く「蹴り」ます。そうしないと上れないのだから、それは当然の行為です。

そのとき、後ろ足で「蹴る」力と、フィンが水中でグリップする力は釣り合っています。もし蹴る力よりもグリップ力の方が強かったとしたら、プレーニングという条件下においては、板の風上側がめくれ上がる(強くヒールする)、もしくは上れずに下り始める、という状況に陥るはずなので、それが無いということは(実際には意識していないとしても)バランスが取れている証拠です。

後ろ足で「蹴る」力とフィンの「グリップ力」のバランスが取れていても、それが小波でジャンプしてしまうと崩れます。単純に、フィンの半分が空中に飛び出してしまったと仮定しましょう。その場合、フィンのグリップ力は半分になり、でもグリップ力が全開の時と同じだけ蹴っていたとしたら、「フィンのグリップ力が半減した=蹴る力が倍に強まった」ということになり、その分だけフィンはスピンアウトしてしまいます。たぶんこれが質問者が頻繁にスピンアウトする原因でしょう。

その解消方法は幾つもあります。例えば、それまでよりも「体を起こす」。セイルに強く頼るとその反作用として板を蹴る力が強くなるので、板がジャンプする瞬間、それまでよりも体を起こしてそれを回避する方法。また「セイルを強く引き込む」というのもあります。セイルをそれまでよりも強く引き込むと板にはより強くベアの力が作用します。そのベア力を利用してスピンアウト=ラフしすぎ、の力を相殺する方法です。さらに、大きくジャンプするような場面では、「後ろ足の踵をお尻に引き寄せるように」という動作もあります。これはテイルを蹴るのではなく引き寄せることでテイルが風下へ流れるのを防ぐウェイブでは常識の動作。上級者はそれらの方法を適材適所、無意識の中で瞬間的に、また反射的に且つ適度に使い分けてスピンアウトを回避しますが、これらを質問者に要求するのは難しいことでしょう。なので(最終的に「こうした方法を駆使できるようになる」ことを忘れずに)まず最初の1歩となる「蹴る力>フィンのグリップ力」の関係に陥らない方法を記しておきましょう。「蹴る力>フィンのグリップ力」にならなければ、すなわち算数的に記すなら「蹴る力≦フィンのグリップ力」であれば質問者の悩みが解決するという前提にたっての話です。

その方法とは「両膝を『締める』」という行為。これはたぶんスノボーもスケボーも、さらにはサーフィンも、すべてのボードスポーツに共通する要素。少しだけ意識して両膝を近づけるように、言い換えるなら「がに股」にならないようにする意識です。これによって何が変わるかと言えば、意識前よりも後ろ足を無造作に強く蹴り出しにくくなります。

小波でジャンプしてしまって後ろ足がそれまでよりも「伸びた」と感じたことがあるでしょうか。(フィンが水中から空中に出たことで)フィンのグリップが減少し、それにより支えを失った後ろ足がそれまでよりも伸びたという経験。そしてそのまま着水して大きくスピンアウトした経験。もしそうした経験を持つならば、膝を締めることでそれが解消できます。

膝を締めても着水でスピンアウトはするでしょう。でもそのスピンアウト加減は、膝を意識しないときよりも軽微で、だからたとえスピンアウトしたとしてもそこからグリップを解消するという「後フォロー」が容易になります。たとえスピンアウトしてもすぐに解消できたならそれは大きな問題とならず、その後も何事も無かったかのごとくプレーニングを継続できることでしょう。

この第1歩をまずは試し、その経験値を積んだ上で、上達するにつれてそれでも尚不足だと感じるでしょうから、そう感じられたなら、前記した「体を起こす」「セイルを引き込む」「後ろ足を引き付ける」などの次なる要素へと移行しましょう。その段階へと達するまでは、まずは両膝への意識。それが当たり前の領域に至ったなら、また次なるご質問をお待ちしています。