アジャスタブルハーネスライン

QH.Hさんからの質問

プレーニング中にハーネスラインの長さを調節する方法を教えてください。金属の調整具がついたアドバンステクノロジーのアジャスタブルハーネスラインを使っているのですが、セイリング中に長さを変えるとき、ハーネスを外してから後ろ手でラインを引っ張って留めを外して(一度長くして)、再度ハーネスをかけて腰の引き具合で長さ調節しています。しかし強風時や荒れた海面ではその手順が上手にできません。

Aアジャスタブルハーネスラインは、ラインの長さを陸上だけでなく海上でも自在に変えることのできるシステム。システム的に様々な種類がありますが、質問者の使うアドバンステクノロジー社のそれは、多分私が長年愛用しているのと同じ。それは、マスト手側(前側)で固定されたシートがチューブを通り、後ろ側の直方体の金属の内側にある滑車を通って外へとシートが伸びるタイプ。長方体の金属にはV字の切れ込みがあり、そこにシートを食い込ませて長さ調節するタイプ。

ウェイブやフリースタイルなどのブーム低めのセッティングは別として、ブームを高く設定することの多いスラロームやフリーライドなどのスピード志向系では、両足がストラップに入ったプレーニング時は短く、しかしその短さだとストラップに足の入らない弱風ではハーネスラインが短すぎることが多々。プレーニングしていて突然風が途切れ、慌ててストラップから足を抜いて棒立ちになったときに、短いハーネスラインを外せずに沈してしまったり、外すのに板の上でジャンプしなければならないことさえあります。このように、プレーニング状況に合致した短さと、それ以外の状況とで大きく異なるラインの長さとのギャップを取り持ってくれるのがアジャスタブルハーネスライン。さらに、クローズでは短く、クォーターよりも下るときは長くするなど、風の強弱のみならず走る向きにも合わせて、いつでも快適にハーネスをかけることができるための存在でもあります。

ハーネスラインの長さに試行錯誤中の人にも大いなる役目を持ちます。ラインの長さを簡単に変更できるアジャスタブルなら、もうちょっと短くすることも大胆に長くして試すことも自由自在。だから自分にジャストフィットするラインの長さを発見するのにとても役立つアイテムでもあります。

自分に最適なハーネスラインの長さを探り当てたあとは(それは人とは違って当たり前です)、プレーニングに最適な短い状況と、アンダーで腕を休めるための長い状況を「両極端」としてチューニングしておくことが大切。その方法は以下。

まずはチューブの長さをプレーニングで最適の長さにしておきます。そうしておけばラインを限界まで引き切って、でもチューブが後ろの直方体の金属に行き当たるからそれ以上は短くできない。また最長に合わせてエイトノットでシートに「コブ」を作っておけば、ラインを全解除したときはその「コブ」が金属に行き当たるから、V字部でロックする必要もなく必然的にそれ以上は長くならない。さらにその最長を示す「コブ」から指4本分の間隔をおいて最後端のところにもうひとつコブを作っておく。もしラインの最後端にコブひとつだとしたら、ラインを最長に伸ばしたときにラインに「余り」がなくなってしまうけど、コブを指4本分開けて二つ作っておけば、最後端のコブに小指の外側が引っかかって引きやすくて、一気に全解除しても二つ目のコブが行き当たるから金具に指を挟むこともない。文章だと難解かもしれませんが、実際にそれを使う人はイメージに容易いだろうこのチューニングに行き着けば、短くするときも長くするときも、繊細な調整を必要とせずに一気に必要な長さに調節できる。まずはその見極めにたどり着くのが最初の難問と言えるでしょう。

その難問が解決してしまえば、あとは質問内にある操作方法で正解だと思います。実際のところ私も、例えばガスティーな荒れた海面では、シバーしながら全解除できる(ラインを最長になるようにロックを解除できる)タイミングを見計らってロック解除で最長にしておいて、そこから走り出して、時々の風速に合わせて徐々に短くしていく。ハーネスをかけたまま少し腰を浮かせて短くするのは容易ですが、腰を浮かして長くするのはなかなか難しいので、長いところから短くする方向への一方通行という考え方。もちろん手練れのプロならば逆行して短い状態から長くするものも容易でしょうが、沈などのリスクを回避するなら、この一方通行が最良と思います。

まとめましょう。まずは最短と最長を見極める。それができたらチューブの長さで最短を、コブの位置で最長をチューニング。その上で海上の操作としては、まずは全解除で最長にしておいて、プレーニングに入ってから(それは前足だけでなく後ろ足も入ってからということ)、少し腰を浮かせたタイミングでシートを引っ張って適度な「短さ」まで調節する。調節は長いところから短くするまでの一方通行との認識で。

質問にある荒れた海面で操作が難しいとのことは、最短と最長が決まっっていないからではないか、と想像します。それらが決まっていないと、最短を超えてさらに探らなければならないし、最長を超えても探らなければならないから、操作に時間がかかりすぎる。長いところから短くする一方通行では成し得ないから、やることが多過ぎてそこに時間がかかるから失敗を誘発する。

そうではなくて単純に荒れた海面だと操作が難しいんだよね、というのであれば、それはここまで記したこととは別次元の話として、全解除するタイミングを、例えば強風のブランケットになる箇所に選んだり、波が小さくなる箇所を選んで実行する、ということになると思います。

これらはアジャスタブルハーネスラインに関する基本的なところです。「どうやって最短と最長を見極めるのか」とか、文中にあった「ダウンウインドでは長くするって、どういうこと」などの疑問がある場合は、あらためてご質問ください。