連載コラム


セイルセッティングpart4

アウトテンションの決まり事

part2でも記したことだが、アウトテンションはアンダーでは緩め、オーバーでは引く。また、クローズでは引き、下りでは緩めるという原則もある。クローズではアウトを引くことでドラフトを浅くし、風を浅く流すことで角度良く切り上がれるようになり、下りでは(ランニングに近く深く下るほど)アウトを緩めてフォイルを深くし、風を溜めるようにすることでより深く下れるようになる。だからオーバーのクローズでは最もアウトを引き、アンダーの下りでは最もアウトを緩める。その差は(ラージセイルの場合)最大で20cmになる場合さえあるほどだ。

プラスマイナスゼロ・テンション

アンダーでは緩め、オーバーでは引く、と言われても実際に、何を基準に緩め、引けば良いのか?

セイル記載の数値を基準にするのは最もわかりやすい方法だ。アウトテンションは「BOOM」という表記でその寸法が記されている。BOOMとは、セッティングした際の(ブーム取り付け位置の)マスト前縁から、ブームエンドの内側までの内寸だから、もしBOOM200cmと記されているなら内寸を200cmにセットして、それを基準に引いたり緩めたりすればいい。

しかし、前述したようにこうした記載数値が当てにならない場合もある。もし記載数値がまったくのデタラメだったとしたら?そんなときに役立つのが、俗に「プラスマイナスゼロ・テンション」と呼ばれる数値だ。プラスマイナスゼロテンションとは、引いてもいないし緩めてもいないこと。このプラスマイナスゼロを基準に、どのくらいプラスに引くか、マイナスに緩めるかチューニングするのだ。

プラスマイナスゼロテンションは、少しブームを長めにセットして、陸上でセイルを立ててみるとすぐわかる。セイルを立てた際に、アウトシートが下の写真のように少し弛んで見えたらそれはマイナステンション。アウトが緩い証拠だ。この弛み具合は、セッティング時(セイルが寝ている状態)とはまったく異なるので必ず立ててチェックすること。

アウトが弛んだ状態から徐々に引くと、下の写真のように、ちょうどシートがピンとなるところがある。これがプラスマイナスゼロテンション。さらに引けばプラステンションだ。

アウトチューニング

こうして発見したプラスマイナスゼロテンションを基準に、アウトテンションをチューニングする。アンダーではどのくらい緩めるのが一番使い心地が良いか、またオーバーではどのくらい引くのが良いか、その判断は乗り手それぞれで異なる。たとえ同じセイルを使っていても、人によっては緩めであったり、人によっては引き気味であったりする。こうした乗り手個々の「好み」があるのもアウトの特徴。ダウンは乗り手にかかわらず、そのセイルが必要とする決まったテンションというものがあるが、アウトテンションには乗り手の好みが色濃く反映されるのだ。

自分にとってどんなアウトテンションが適しているのか。その答えはあなたの日々のセイリングの中にある。いつも同じセッティングで何の疑問も持たずに乗るのではなく、わからないにしても「もっと気持ちよく乗れるアウトチューニングがあるんじゃないか?」と自問自答し、とにかくマメに変えて試してみること。それをして初めてアウトチューニングが理解できる。チューニングを理解したいと望むなら、無精こそが最大の敵なのである。