連載コラム


ウェイブライディングの

ファーストステップpart1

普段はフリーライドやスラロームに乗っていて、ウェイブの道具も保有している人は多い。また、ウェイブに魅せられてそこでの上達を願う人も多くいる。でも休みをすべてウインドに費やせるとしても、ウェイブが出動できるチャンスは決して多くない。だからなかなか上達しない。それでも数少ないチャンスを生かしてウェイブを楽しめたら良いのに、と願う人たちのために「今日試したら今日上達する」、そんな即効性のあるウェイブライディングのファーストステップについて考えてみよう。

ここから先しばらくは、「そんなの知ってるよ」という人にはちょっと我慢をお願いして、用語の解説も含めてごく基本的なところから話を進める。

まず最初に、ウェイブライディングには2種類ある。ひとつはフロントサイド・ライディング、もうひとつがバックサイド・ライディング。

フロントサイドは動画でよく見る波乗り方法。波のフェイス(壁のようになった波の斜面)を滑り降りながらジャイブのようにボトムターン(波の斜面の最下部のエリアでターンすること)して、再びフェイスを駆け上がって、波のリップ(今まさに崩れようとしている波の頂点)を狙ってトップターン(波の頂点でターンすること)するパフォーマンス。サイドショア(波に対して真横から吹く風)に近いオンショア(波に対して沖から吹く風)から、サイドオフショア(真横よりも少し岸から沖に向けたオフショアで吹く風)までの風向で手際良くできるアクション。上達すれば超オンショアでもできるが、そこには相応な技量が必要になる。

フロントサイドのトップターン。乗り手は正面に波を見て波頭でターンする。

バックサイドは波を背中に受けるように波に乗る乗り方。たぶん多くのゲレンデがオンショアやクロスオンショアであることや、フロントのライディングよりも技術的に簡単であることから、「波に乗る」という行為において誰もが最初に経験し、また誰もが最初に上達へとトライするのがこのバックサイドだろう。

バックサイドのトップターン。乗り手は背中に波を受けて波頭でターンする。ちなみに上のフロントサイドの写真もこれも、どちらも板は95リッターの(柄が違うけど)ラージサイズのフリーウェイブボード。同じサイズの板を使っている均一状況での難易度としては圧倒的にフロントライドの方が難しい。

ゲレンデ状況を踏まえて、またフロントサイドよりもバックサイドの方が身近で簡単という現実も踏まえて、ここからはバックサイドに焦点を当てて話を進めて行く。

クロスオンショアのゲレンデ。多少の失敗はあるにしても、どうにか沖に出て、戻って来れる技量があるとするなら、戻り道でなんとなく波に乗った経験はあるはずだ。たぶんそれはバックサイドでの波乗り。自らの意思で波に乗ったというよりも、波に「乗らされた」と感じているかもしれないが、いずれにしてもここまではさほど難しくなく事が進む。

そこから一歩進むと「波の上で板を動かしたい」と思うようになる。そこでひとつの壁に突き当たる。波に乗って板を動かしている(フェイスを上がったり下がったり)つもりなのに、上級者と比べるとその動きには明らかな違いがあり、簡単に言うなら「動きにまったくキレが無い」。それどころか「波に乗っても、ただ波に押されてフェイスを滑り降りるだけで、動こうにもまったく動けない」という人もいる。それでも無理して動いてみたら、横波を喰らって波に巻かれた、というのもよくあるパターン。

そうした悩みを持つ人は、波に乗っても「セイリング」している。しかし波乗りにおいて必要なのはそれとは違う。波乗りに必要なのは「サーフィング」。セイリングとサーフィングはまったく異なる現象であり、行為なのだ。ウェイブライディングのファーストステップは、まさしくその両者の違いを認識することにある。