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バテンテンション バテンテンションは強すぎず弱すぎず、が基本。特にレースセイルでは、テンションはできるだけ強くかける、と思い込んでいる人がいるが、これは大間違いである。 強すぎず弱すぎずの目安は、セイルの前縁から1/3くらいまでのバテンポケットの上下にできるシワを見る。この部分のシワがちょうど無くなるところが適切なバテンテンション。ただし、ドラフトが最も深く形成される1番下のバテン、さらに場合によっては下から2番目のバテンに関しては、多少シワが残ってかまわない。ドラフトの深いこれらブーム下のバテンに限っては、シワが無くなるまでテンションをかけるとテンション過多になりがちなので、シワの2〜3本は許容範囲と判断する。
こうした適切なテンションを与えず、もしテンションが足りないと、パネルの張りは失われ、ドラフトは不安定に、セイル性能が発揮されなくなってしまう。またテンションが強すぎると、パネル全面に過度なテンションがかかってセイル性能がマイナスされるだけでなく、何よりもセイル破損の原因となる。上の写真赤丸部付近がバテンポケットに添って切れた経験を持つ人は、テンション過多が原因だ。 このテンション過多は、レースセイルで起こりやすい。特にニールの場合は、バテンエンドのバックルによってテンションをかけるため(てこの原理で簡単に強いテンションがかかるため)、限度を超えたテンションになりがちなので注意。薄いフィルムと布で作られたセイルは、バックルで力一杯かけられたテンションに耐えられるほど素材強度が強くはないのだ。
新しいセイルの場合、フィルムでできたパネル本体とダクロン生地の重ね合わせでできたバテンポケットの素材的、縫い合わせのわずかなズレがあるため、使用当初はそれを適度に伸ばして馴染ませなければならない。なので最初は少しシワが残るくらいのテンションでとどめる。その状態で1回使うとシワが増えるので、次回は少しテンションを加えてシワを伸ばす。それを3〜4回繰り返すとシワの無い完璧なバテンテンションを持つセイルが完成する。一度にシワを無くそうと無理してテンションをかけると、逆効果となってバテンポケット周辺のパネルが不自然に伸びる可能性もある。
バテンテンションチューニング バテンにはテーパーとチューブの2種類がある。テーパーバテンは先端ほど薄く(細く)て曲がるようにできたバテンで、チューブバテンは後方が太いチューブで覆われたバテン。このチューブバテンは、ドラフトをチューブの前部のテーパー部に固定できるという利点に加え、細いテーパーバテンに比べて曲がりにくいチューブ部のドラフトカーブが浅くできるという特徴がある。
どちらのバテンに関しても、バテンテンションを強めるほど曲がり、弱めるほど真っすぐになる。ここにバテンテンションのチューニングが生まれる。 セイルは基本的に、ブーム下はローエンドパワーと安定感のためのエリアで、その性能を高めるためにボトムに近いほどドラフトが深くできている。対してトップに近づくほどツイストにともなうリーチの開きを促進するためにドラフトは浅くできている。そのためレースセイルなどでは、ドラフトが最も深い1番下のバテンは細く、その上何本かはチューブバテンでドラフトを前方に固定し、トップに近い2本ほどはまったくテーパーの無い棒状のバテンでドラフトカーブができないように細工されている。 こうした異なるバテンによる性能に加えて、乗り手がバテンテンションをチューニングすることで、さらにセイル性能を高めることができる。簡単に言えば、ドラフトを深くしたいセイル下部ほどテンションを強く、フラットにしたいセイル上部ほどテンションを弱くチューニングするのである。 ちなみにすべてのバテンが細いテーパーバテンであるIMCOセイルでは、微風では第1〜2バテンまでしっかりとテンションをかける。そうすることでセイル上部にもドラフトカーブができ(ドラフトが深くなり)、パワフルにパンプパワーが増大できる。逆に強風では上3本のバテンテンションをバテンポケットに少しシワができるくらいまで緩めてドラフトカーブを浅く作る。これで風を受けた際のリーチの開きが促進され、より強風でのコントロール性とスビード性能が高まる。もしテンションが強いままで強風に乗ると、テンションによって曲げられたバテンカーブが風を溜めてしまうため、リーチが開くどころか閉じてしまう。こうして強風がより難しくなってしまうのだ。 このように、普段はあまり意識しないバテンテンションに注目するだけで、セイルの寿命を伸ばしたり、性能を向上させることができる。今まで意識が薄かった人は、もしかしたら間違ったバテンテンションで損をしていたかもしれないのである。 The End |