A:この質問を受けたのが昨年の11月末。通常ならどれほど調査に時間がかかってもこれほど回答が遅れることはありませんが、今回は4ヶ月以上かかってしまいました。なぜこの質問にこれほど時間がかかったかと言えば、その内容がフォイルだったから。当HPはウインドサーフィンに関することに関しては過去、すべての質問にお答えしてきましたが、「プレーニング」するウインドサーフィンとは異なる「フォイリング」という別の乗り物に関してお答え須べきかどうか悩んでいたからです。
私自身、フォイルはしません。なぜなら私はプレーニングが好きで、それとは異なるフォイリングに(現段階での話/今後はどうかわかりませんが)まったく興味が無いから。ワールドカップやプロサーキットで風が弱いとき、アトラクションとしてフォイルがあるのは承知していますが、それでもどうにも興味が沸き上がらないのです。その理由は何とも不鮮明ですが、たぶん、まだまだプレーニングが楽しくて仕方無いからだと思います。浮気するほど、プレーニングという現象を追求し切れていないからなのかもしれません。また、ウインドサーフィンはその名のとおりに風と波を相手にする乗り物です。特に波に関しては、それは海面と言い換えることも出来て、すなわちレイルで海面を感じ、エッジで海面を切り裂くとか、そうした行為があってはじめてウインドサーフィンだという認識があり、そうした意味でフォイルはウインドサーフィンではなく「フォイルボード」という別のスポーツだと感じているというのもあります。
興味が湧かない最たる理由にスピードが挙げられるかもしれません。フォイルと幾度も競争したことがありますが、そのスピードはあまりに遅くてガッカリでした。もちろん相手の技量にもよるでしょうが。
ウインドフォイル以外にも、アメリカズカップのAC45と競争したこともあります(それはまったく偶然の出来事で、今後願っても叶わないことでしょう)。11人乗りのモンスターマシンであるAC45に対して、クローズと、ランニングに限りなく近くクォーターを越えて下るフルダウンウインドは相手にされませんでしたが、アビーム近辺の走りはシンプルな一人乗りのウインドの方が速かったです。ウイングのあるラダーから巻き上がる水しぶきは、6機もの船外機を付けた巨大なスピードボード(4機は見たことあるけど実際に6機があるのかわかりませんがあくまで想像として)が走るかのごとくの水量で、並走して怖いと感じるほどでしたが、それでもなおウインドの方が早かったのです。さらに、一人乗りの「モス」はセイリングクラフトとしてもっとすごいと感じました。世界選手権のため逗子沖で練習する国別認識番号の看板を背負った選手の走りは目が離せないなるほど素晴らしく、タックもジャイブも、もちろんセイリングも海面からハルまでの高さを一定に保ち続けてフォイリングし続ける。でも実際に並んで走ってみると、やっぱりプレーニングの方が速かった。特別に気合いを入れるまでもなく、また私の技量でさえ、あんなに速く見えたセイリングクラフトよりも楽々と速く走れてしまったのです。そうした現実において、フォイルは見て楽しいけど、実際に乗るのはプレーニングの方が魅力的と思ってしまいました。
フォイルが登場した当初、「ウインドがプレーニング出来なくてもフォイルは走る」「ウインドよりも小さなセイルサイズでフィイルできる」というのがあり、それは私の目にも大きな魅力と映りました。しかし時を経ての実際では、例えば同じセイルサイズを使ったとして、ウインドがプレーニングできるかできないかのギリギリのときだけフォイルできる、ウインドよりも小さなセイルを使ったらフォイルが浮く頃にはウインドもプレーニングできる、でした。そう考えるとフォイルがその最大の魅力を発揮できるのは、「ウインドと同じセイルサイズを使い」「ウインドがあと一歩で走り出せないギリギリの状況でだけフォイルできる」ことに限定されます。それは競技シーンにおいては多大な貢献となるかもしれませんが、正直なところ日常のウインドライフの中では、そんなときは「あとちょっと風足りなくてダメだったね」で納得できてしまうというのも、ピンポイントでのみ魅力を発揮するフォイルに興味が湧かない理由に挙げられるかもしれません。
理論的な側面からは、フォイルという現象は「排水型」の船をより速く走らせるためのアイテムと考えられます。排水型とは種を異なる「滑走型」のウインドでそれが必要かと言えば疑問。それは例えるなら、競艇のボートにフィイルを取り付けるようなもので、しかしフォイルを取り付けたことで、それが無い今よりも圧倒的にロースピードになる。アメリカズカップに代表されるようなヨットという排水型ハルにフォイルを付けるのはスピードアップするのだから納得ですが、競艇ボートやウインドなどの滑走型ハルになぜあえてスピードを押し殺すフォイルを無理してまで付けなければならないのか納得できないというのも個人的に思ってしまうところ。だったらもうひとつ大きなサイズのセイルを買った方がお得なんじゃない?フォイルがフィン1枚ほどの値段ならまだしも、セイル買った方が安いんじゃない?というのも疑問を膨らませる要因です。
とは言えプレーニングとは異なるフォイルという現象に大いなる魅力を感じている人もいることでしょう。プレーニングには無い浮遊感が最高という人も多いと思います。もちろん私も、今は前記したようなコメントではありますが、1年後にはフォイル最高!と言ってるかもしれません。なぜなら私はフォイル否定論者ではないからです。それでもなお現時点においてフォイルに興味が無く、また疑問が多いという理由において、現段階ではフォイルに関する質問にお答えする立場に無いと思い、当質問への回答は差し控えたいと思います。フォイル熟練者に聞いて回答するのは簡単なのですが、そこは私の超個人的かつ頑固な部分とご理解頂ければ幸いです。
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