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Q:S.Sさんからの質問 カーボンブームの選択で悩んでいます。使用セイルはTAKA3の5.3。ブーム長Maxで173センチ。候補のブームはチノックの135ベース(Max185センチ)かアーロンの140ベース(Max190センチ)。使用感、剛性などどちらが良いでしょうか。 |
A:結論から言えば、双方優劣付け難くです。 つい数年前までチノックはモノコック構造ではありませんでした。モノコックとは左右のパイプが前方(マストに接続するブームジョー部分)で分断されてなく、左右パイプが曲線を描きながら1本で繋がっている構造。3年以上前のチノックはそうではなく、左右パイプが別々に独立していて、それがブームジョーを媒体として接続していました。その場合、どんなにカーボン製のパイプに剛性があっても、それを接続するプラスチックもしくはプラスチックとカーボンの複合材のブームジョーの「たわみ」が影響してしまいました。もし当時で比較するならばモノコック構造であるアーロンに圧倒的軍配を上げますが、今のチノックはモノコック。ゆえにその軍配は取り下げとなります。 ベース長に5センチの差があるため、チノックの方が余計に伸ばす必要が生じます。と考えると、より長く伸ばす方が「たわみ」が生じやすく思えるかもしれません。しかし、そもそももっと長く伸ばせるように作られているエンドを、プラス10センチ以上余計にパイプ内に収めるのですから、その心配も無用。すなわち、より長く伸ばさなければならないからという理由でチノックを排除するのは見当違いということです。 このように優劣付け難いチノックとアーロンですが、それでもあえて双方を比較するなら、ブームカーブとブーム径にあるでしょう。 アーロンは俗に言うところのフロントワイドで、前方で一気に広く、そこからエンドに向けてスッと細くなります。対してチノックは、フロント部でアーロンほど一気に広がらず、それよりも後方に最大広部があります。フロントで一気に広がっているブームカーブの方がマストを立てやすく、すなわち走るのに適し、フロントの広がりがそこそこのブームカーブの方が、マストが体に近いという理由で操作しやすいと言えるでしょう。しかし半面で、マストを立てやすい(体から遠くポジションしやすい)フロントワイドで一気に広がるタイプの方がボトムターンしやすく、フロントの広がりがそこそこの方が、ボトムターンでは乗り手の技量でマストを立てる必要があるとも解釈できます。それはどちらが良いということではなく乗り手の技量やスタイル、好みに影響される部分で、あくまで私の個人的嗜好(波乗り絶対主義)で無責任に言うなら、あまりフロントワイドすぎない方が好みです。 これは、質問者がどのような状況でそのブーム(そのセイル)を使うか、にもよるでしょう。波がある中で、またそのセイルサイズの最適に近い風速で使うならば、バテン数的にもそこそこアウトを引いてセイルをタイトにチューニングするはず。対して波が小さく、またガスティーであったりアンダーであるなら、さらにはフリースタイル的な加速トルクも必要とするなら、たぶん前者に対してアウトは少し緩く、ドラフトを深めにチューニングするはず。前者のチューニングならばチノックもアーロンも問題ありませんが、こし後者のドラフト深めのチューニングならばよりフロントワイドなアーロンの方が良いかもしれません。前方カーブが少し細めのチノックだと、深いドラフトがブームカーブに邪魔されるかもしれないからです。 ブーム径についてはもっとも好みの出やすいところでしょう。カタログ上はチノック28パイに対してアーロン24.5パイ。実際にはチノックはそれほど太くはまったく感じませんが、握り心地はやはり少し太く感じます。パイプ表面のグリップはチノックの方が柔らかく感じ、アーロンは硬め。チノックの方が厚めでアーロンの方が薄めと言い換えることが出来るかもしれません。チノックの方が少し太いけど握り心地が柔らかく、アーロンの方が細いけど硬い握り心地というその違いは、ぜひとも双方握り比べて選ぶべき要件となるでしょう。質問者の体格が不明なので握り心地に関する想像ができず(体格によっておおよそ手の大きさも想像できるので)、また、それ以上に質問者がブームに求める握り心地の好みもわからないので何とも言い難いところですが、可能であるなら双方握り比べてみるのが良いと思われます。たぶんその握り心地の第一印象が、質問者が選ぶべきブームを明確に指し示してくれると思えるからです。 |