フィンボックスの乱流

QJ.Hさんからの質問

小さめのウェイブボードの購入を考えています。ピュアウェイブというよりも強風フリーライド的な使い方なので個人的にはシングルフィンが希望ですが、最近の板はほとんどがマルチフィン。となるとスラスターの選択になるだろうと思っています。そこで質問。板によってはツインにもクアッドにもなるように幾つものフィンボックスがありますが、フィンを付けてないボックスは泡を引いたりキャビテーションの原因になったりしないのでしょうか。メーカーによってはフィンボックスカバーで穴を塞ぐタイプもありますが、それで防げるものでしょうか。

Aボトムにスリット状の穴が開きっぱなしなのですから、そこに水流が侵入してマイナス要素を引き起こすのではないか、という心配はごもっともな意見と思います。しかし実際は、心配するほどの大きなマイナス要因にはならないと思います。

昔、私がまだプロとして現役で、国内の超大手メーカーに所属していたとき(今はウインドから撤退。世界的オートバイのメーカーとして有名で、ボートやヨットを製造するブランド)、高速走行時の滑走艇(競艇のボートも)のボトムには「空気の泡と混ざり合った水流が高速で『蛇行』しながら流れる」という実験結果を得たことを思い出します。その泡と水流の混合物がボトムフィンボックスの穴へと流れ込むと考えるのは正論ですが、同時に、高速走行時には、すべてのモーターボート、特に複数の船外機で水面上を飛び跳ねるように高速で走るパワーボートのボトム面に多数刻まれている段差「ステップ」のように(それはウインドの場合テイルに刻まれる段差として最新モデルにも見ることができます)、段差の頂点から水が弾き飛ばされるように流れることで、水流が段差部で巻き込まれるように乱流を起こさないという理論もあります。ちょっと言い方がややこしくなってしまったので簡単に言うなら、高速で走る限りはボックスの溝に水流が「ゴボッ」と流れ込むこと自体が無いということ。蛇行して流れる泡と水、さらに空き家のボックスの前縁の角からそれらが後方へと弾き飛ばされるという理論的観点からも、ボックスというスリット状の穴がさほど大きなマイナス要因を招かないだろうと推測できるということです。

そうは言ってもはやり塞がっている方が良いだろうことは疑いないでしょう。空き家のフィンボックスをカバーできるのであればそれに越したことはないし、もしどうしても心配であるなら、ボックス内に適度にカットした発泡スチロールを挿入し、その表面をボトム面と「ツラいち」にシリコン材などで塞ぐという手もあるでしょう。ちなみにこれははるか昔、まだタトルボックスが世に存在せず、また今とは桁違いに遅いスピードしか出なかった板のフィンボックスがウェイブと同じUSボックスだった時代、少しでもスピードを得たいと願うがゆえに、フィンの前後に余ったボックスの穴をそうして塞いでいた経験上のものです。

話が横道にそれましたが、冒頭記したように、空き家のボックスなど「気にするほどのことじゃない無いでしょう」と言うのが私的結論です。