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Q:S.Nさんからの質問 7年前のRDMマストを使っています。接合部に少しのガタつきがありますが、今のところ問題がないようなのでまだ現役。ところがショップ曰く、1年の保証期間を過ぎればいつ折れても不思議でないとのことで心配になりました。とは言え、毎年買い替えるなど到底できません。買い替え時期などあるのでしょうか。 |
A:1年の保証期間を境にマストが折れやすくなるワケはなく、質問にあるショップの話は「1年の保証期間内なら折れても交換してもらえるけど、それを過ぎたら交換不可」という意味でしょう。 マストの耐用年数は必ずしも「何年使ったら交換」と決まっていません。実際のところ、個人的な経験談を言うなら、下ろしたて新品ピカピカの最高級マストがダウンを引いた途端にあっさり折れたこともあるし、と思えば、今使っているマストは今年すでに5年目。周りには10年選手のマストを現役で使っている人も多数います。 とは言え、使用期間が長くなるほど折れるリスクが高まることも事実。なぜなら使用頻度が高いほど傷がついたり、経年劣化によってカーボン素材そのものが劣化するから。なので理想を言うならば「3シーズン目を目安に中古で出して、その資金を元手に新しいのと買い替える」。でも実際には、懐具合が相当に暖かくないとそれは現実的ではないでしょう。そうした理由で、結局は「折れるまで使い続ける」ことになる人が多いです。 もし沖でマストが折れてしまったら?それは大いに困ります。そうした危険を伴う悲しいことに陥らないために、そのリスクを減らす方法というのもあります。 まずはセイルマストスリーブ内の砂や小石を毎回しっかり洗い流し、完全乾燥させて次回使用に備えること。セイルの修理をしていると、スリーブ内に砂が溜まってるのは当たり前、嘘のように聞こえるかもしれませんが、1センチもある小石が入っていることさえ少なくありません。そうした砂や小石がスリーブとマストとの間に入り込んで擦れれば、マストの傷みが早まることは想像に容易いでしょう。なので出来るならば、海から上がってセッティングを解除したら、スリーブトップからホースで勢い良く水を流し込んで砂を洗い流します。それだけだと濡れた砂がスリーブ内に留まるので、さらに完全乾燥させてスリーブ周辺をパタパタと叩き、そうして内部の砂を叩き落とします。ちなみに塩分を含む海水は砂を「こびりつかせる」ので、未洗浄での完全乾燥では効果無しです。 マストの上と下のピースを毎回、回転させて使うのも長持ちの秘訣。いつも決まったところが前縁にあると、接合部を含めてマストに「曲がり癖」がつきます。特に接合部はその曲がり癖によって「くの字」に大きく歪んでしまうことさえあります。するとマストの一方向にダメージが集中することになるので、毎回、上下を回転させることで前縁にくる部分をローテーションさせ、一点集中しがちなダメージを分散させてやります。これは簡単に言うなら、「いつも決まった向きでマストを通さない」ということです。 こうした気遣いをしていても、それでも折れる時は折れてしまうのがマスト。しかし折れる前兆があることも知っておいて損はないでしょう。多くの場合それは(理由はわかりませんが)、いつもよりダウンが引きにくいと感じた時に起こりやすいようです。セイルのトップキャップがマストヘッドにしっかり入っているのに、また上下ピースが隙間なく接合しているのに、なぜかいつもよりダウンが引きにくいと感じたら、もしかしたらその日にマストが折れるかもしれません(私自身、沖でマストが折れる時の多くはこの前兆を感じます)。その「折れる気配」を感じ取るには「らくぼうくん」などを使わず、人力でダウンを引くことを日常にしていることが必要。手で引いているからこそ、わずかな「いつもとの違い」が感じ取れるということです。 |
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