A:これまで私は一度もリバティーマストを使ったことがありません。そのため今回の質問に関してはそれを知る方々にリサーチし(そのため回答までに時間がかかってしまいました)、以下の解説は彼らの総評であることをご理解の上で読み進めてください。
リバティーマストには、元々のオリジナルモデルと後発のウェイブモデルがあり、オリジナルはレース系のセイルに適し、ウェイブはその名前の通りにウェイブを筆頭とするアクション系のセイルに適します。両者の違いは主にベンドカーブにあり、使用感としてはオリジナルは硬く、ウェイブはそれよりも柔らかく感じます。またウェイブの方がオリジナルよりも耐久性に優れる、イコール「折れにくい」という違いもあります。これらは質問者において、性能重視ならオリジナルで耐久性重視ならウェイブの選択を示唆しますが、残念ながらこれらはRDM(細い径)での話で、質問者の注目するSDM(太い径)はオリジナルだけのラインナップなので選択肢は限られてしまいます。その限られる選択肢のSDMには、カーボン含有率で100、80、60の3種がラインナップしています。
多くのブランドでは現在、SDMはトップレースセイル用で、スイッチブレードのようなセカンドレースセイルやフリーライドセイル、さらにはフリースタイルやウェイブセイルでは耐久性に優れるRDMの使用想定が主流。そこには性能面と耐久面との駆け引きがあります。単純比較した場合、太いボトム部から細いトップ部まで細さの違いで繊細なベンドカーブ性能を生み出せるSDMの方が高性能を生み出せる半面で、ボトムからトップまで細いRDMが肉厚が厚く作れるのに対して肉厚が薄いためにどうしても折れやすいという葛藤を抱えます。故に成績至上主義のトップレーサー御用達のトップレースセイル以外は、マストが折れてスリーブが破けてなどのストレスを抱えないためにのユーザー視点に立ってRDMが想定。その想定の上で今のトップレースセイル以外のセイルは、SDMよりも性能的に劣るはずのRDMでも高性能が発揮できるように初期設定されています。
余談ですが、現在ほぼ全てのブランドマストにはレース用とかウェイブ用という概念がありません。長ささえ合えばレースセイルにもウェイブセイルにも互換するのが当たり前。そうした視点から見た場合、レース用とウェイブ用に別のマストをラインナップするリバティーマストは、レースに適するオリジナルモデルの耐久性面に少なからずの心配があるのでは?と想像してしまいます。実際のところリサーチにおいても、リバティーマスト(オリジナルモデル)は他よりも「折れやすい」との声も聞こえました、それらを総合するならば、RDMよりも折れやすいSDMを選択し、さらに他よりも折れやすいとの声が聞こえるリバティーマストを選択する場合、例えば夏の本栖湖のようにマストが高温に晒されるような場面では、他のマスト以上に注意深くしなければならないだろうという想像が成り立ちます。張りっぱなしで浜に放置するのは論外として、温度が上がり過ぎないようにマストにバケツで水をかけるなどの一手間、ふた手間が必要だろうということです。
ロフトセイルのスイッチブレードはマストとの相性を限定しません。過去歴にも記しましたがそのセイルは私自身が今も使い続けているセイル。これも過去歴に記したことですが、私はそれ以前、好き嫌いに関係なくお世話になるスポンサーのセイルを使っていました。しかしすでにレースなど眼中になく年齢的にも歳を重ねて、ここから先は自分の気に入ったセイルを使いたいと思って多くのブランドのセイルを試し乗りして最終的に選んだのがそれでした。理由はブローホールでの加速持続性能が圧倒的に高かったから。簡単に言えば風が抜けた時にセイルをグイッと引き込みやすく、スピードの持続がとても簡単で気持ち良かったから。さらにそのセイルを選んだ後には、多くのバリエーションのマストでも試し乗りしました。SDMのカーボン100、75、50、さらには30まで、RDMの100、75などです。
その結果は、どのマストを使っても(チューニング次第で)そこそこの性能が引き出せるものの(それはスイッチブレードがマストを一切選ばないという証明)、その中でもベストを示すならば、SDMならば75(リバティーなら80)、RDMならば100というもの。SDMの100だと硬すぎて規定値まで全くダウンが引けないばかりでなくパネルテンションが強くなりすぎてアンダー性能が失われ、RDMの75だと少しマストの「腰が弱く」てオーバーの性能が失われる。突き詰めて欲を言うならばそういうことです。結果私はSDMよりもジャイブ時などでのハンドリングが軽快なRDMの中でもっとも高性能を引き出せるRDMの100を使い続けています。これをリバティーマストのSDMに当てはめるなら、カーボン80で決まりだね、ということです。
しかし前記したようにそれはRDMよりも折れやすい。質問でSDMを限定する理由はわかりませんが、もし選択肢がRDMまでおよび、さらにはSDMの抱える耐久的な心配を払拭したいのであれば、リバティーマストラインナップ内においてオリジナルのRDM100を選ぶのがベストだと思います。ウェイブモデルよりも圧倒的にレース系セイルの性能を引き出せて、それでいて耐久的にも安心が得られるからです。ちなみにスイッチブレードは3カムで、他のブランドのようにバテンごとに異なるサイズのカムが必要ということもなく全て同じカムで互換するし、購入時にSDM用とRDM用の両方のカムが付属しているので、またカムごとにスペーサー(カムをマストに押し付けるための小さなパーツ)をあれこれと思案する必要もなく、ただカムを付け替えるだけでSDMとRDMの乗り換えが簡単にできるのも手間要らず。
最後に、リバティーマストは上のピースと下のピースの組み合わせが別買いできて組み合わせ自由ですが、それぞれの組み合わせでの性能や耐久性はあまりに複雑すぎて解読不可能。使用する方が少ないこともあり情報収拾も無理なのでご勘弁を。そうしたよりディープな情報に関してはメーカーにお問い合わせください。 |