A:ごく個人的な意見ですが(ゲレンデ状況に大きく左右されると思いますが横並びで考えるなら)、ウェイブを楽しむ人の7割強は、波を越えてアウトに出れないとか、波に巻かれてばかりなど、波乗りやジャンプを語る以前=板の性能を語れるレベルに到達する前段階。対して上3割弱のレベルになって初めて、波乗りなど板の性能を身近に感じられるのだろうと思います。そうした意味で質問者は上位3割にいる「相当にウェイブができる人」と判断して話を進めたいと思います。
例えばスラロームであれば、誰もが板に求めるのは「スピード」と「ジャイブ」の2要素。それが共通項となることで、今の板の中で選ぶなら「これよりこっちの方が速い」とか「こっちはあれより少し遅いけどジャイブは抜群だよ」だったり、もしくは古い板を検証するなら「その板は当時、こうした評価があり、実際に誰々が乗ってこのように速かったから良いと思う」などのコメントが成立します。しかしウェイブボードでこうした評価はとても難しいと言えます。なぜならウェイブという楽しみ方には、人それぞれの個性、俗に言うところの、個々の「スタイル」が大きく影響するから。
例えばトップターンを考えてみましょう。ある人は深いボトムターンから鋭角的に真っすぐにフェイスを駆け上がり、瞬間「パシッ」と返すのが好き。しかしある人は速さのあるボトムターンから浅く緩やかにフェイスを駆け上がって速さを元本にリップでエアーをかけるのが好き、など軸とする好みが分かれます(それはゲレンデのコンディションにも大きく左右されるでしょう)。もちろん多くの板は売り言葉として「どっちもバッチリですよ」と掲げるのですが、実際には板それぞれで「こっちが得意、あっちが得意」とそれぞれの個性があるのが現実。そうした板の個性と自分の個性=スタイルが合致するかどうか、言い換えると、自分の好みにその板が答えてくれやすいかどうかが、その板が最良の相棒となるかどうかの境目となるのだろうと思います。
そうした基本を踏まえた上で質問に戻りましょう。長い年月を同じゲレンデで乗り続けた仲間ならその人のスタイルは理解できますが、残念ながら質問者はそうで無く、私が質問者のスタイルを理解するのは無理。また、最新のものから過去のものまで、年式を越え、ブランドを超えて該当するボリュームの、すべての板の個性を私が理解しているかと言えばそれも有り得ません(それは「当たり前だね」とご理解いただけるでしょう)。こうした理由において、質問に明確にお答えできないというのが、正直な回答になってしまいます。
実際のところ私自身、80リッタークラスのウェイブボードはすでに10年近く前のモデルに乗り続けています。もちろん乗り換えは随分昔から頭にあるのですが、その長い年月の間で試し乗りできた幾つかの板に、この慣れ親しんだ板を超える感動を覚えることができなかったので仕方無く乗り続けています。壊れてないからまだそれも可能なのですが、もし破損激しく限界を迎えたとしたら、たぶん質問者と同じ悩みの迷路に迷い込んでしまうのだろうと思います。すなわち、自分のスタイルを相応に持つ人にとって、板の乗り換えは相当に難しい作業だということで、そこには大きな悩みが付きまとうということです。
とは言え、いくつかのヒントはあると思います。
まず、同じブランドの同サイズのウェイブボードはその個性が似てるだろうという前提。板のデザインはデザイナーの個性によるところが大きいです。時々の契約プロライダーの好みに合わせて修正されることはありますが、基本のところでデザイナーの嗜好は失われません。なぜなら多くの場合、デザイナーもまたウェイブをたしなむ相当な(それこそ世界トップレベルの)腕前の人であることが多く、どんなに「こうしてくれ」と言われても決して譲れない根っこのところがあるものだから。なので同じブランドの同じ名前の板が今もあるとして、またデザイナーが同じであるなら、その乗り味は似てるだろうと想像できます。板の見た目が大きく変わったとしても、乗り味の嗜好が同じはずだから、同じような味わいで乗れるだろうということ。そうした視点から見ると、まず第一に乗り換えの候補として挙げられるのは後継者のKODE80リッタークラスになるのだろうと思います。
ただここでひとつ考慮点が。それはフィンシステム。どの年度からかわかりませんがKODOもまた他の例に漏れずシングルからスラスター(トライ)になっています。シングルとスラスターは乗り味が異なるので、そこで思案すべきは「スラスター想定のこの板をシングルフィンで乗ったらどうか?」という想像。スラスターはセンターフィンに大きめのものを装着することで(そのサイズは今の板で使っているサイズと同じで)シングルとして使えます。そうすることでスラスターとは異なる個性を発揮することも多々あります。そこの見極めも無視できないよね、ということです。
なぜこのようなことを言うかといえば、ウェイブ系の板には大きく分類して「板で曲がってフィンで真っすぐ走る」と「板で真っすぐ走ってフィンで曲がる」の2種類があるから。前者は特にロッカーが回転系の曲線で構成されていることが多く、その曲線的なロッカーでターンを生み出し、それを真っすぐ走らせるためのアイテムがフィンだというデザイン。対して後者はロッカーはスラロームなどに準ずる直進スピード系で、そのロッカーで真っすぐに走ろうとする板を小さなフィンで曲がりやすくする、という命題の違い。
双方、どちらが良いと言うことでは無いのですが、それぞれに乗り味の個性が異なるので、ウェイブマニア的に厳密に言うならば、その見極めはとても重要ということ。なぜならそれがスタイルに大きく影響するから。ちなみに私は前者が好みで後者はパス、です。
その板が上記したどちらのタイプであるかの判断は、「フィンシステムを同じにして試す」ことでわかります。それは簡単に言って、今どきのスラスターの板を借りたら、今使っているシングルフィンを付けて(サイドフィンを外してシングルで)試してみる、という行為によって。それはメーカーのライダーなどではないレベルの普通の人が(私も含めて)検証するにはとても難しいことですが、想像を膨らませる中では、「同じブランドの同じ名前の後継モデルで、フィンシステムを同じにして試す」というのは、まったくの暗闇の中で板選びしなければならないという現実の中においては、相当な「当たりを引ける」可能性を秘めた「試しごと」だと思います。
質問内容から推測すると、質問者は幾つかの試乗ができる立場にあると思われます。そうした試乗の際に、もしその板がスラスターだったとしたら、手持ちのシングルフィンを付けて「シングル」で試し乗りしてみるということ。もしかしたらそこから思いがけずの情報が得られるかもしれません。
もうひとつ、多くの人が板選びの指針としているのがネットからの情報。昔ならば得られる情報は実際に目の前で乗る上級ライダーのライディングやコメントだけでしたが、今はネットから得られる不特定多数の人からの膨大な情報があります。ネットで拾える「その板でのライディング」の映像や、その板に乗っている人のコメント。その中でも特に注視すべきは、メーカーライダーではなくその板を個人購入して乗っている普通の人からの映像やコメントになるでしょう。メーカー専属のプロライダーは、その板がたとえ乗りにくくても技術でそれをカバーして「良く見せて」「良いコメントをする」ことが出来るしそれが仕事ですが、普通の人はそうした忖度はしないので、そこにこそ本音が見えるということです。
より多くの画像を拾い見てその動きを自分に置き換えて想像してみる。その動きが自分の求めるスタイルに合いそうなのかどうかはこれである程度は見極められる思います。同時に(出来ればですが)、もし近場でその板に乗っている人がいるなら積極的に聞き込みもしてみましょう。そうして情報を収集し、収集した情報を重ね合わせることで真実に近づくはず。多くの人はそうした情報収集から、板選びを絞り込むヒントを得ています。
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