ジョイントエクステンション

QY.Kさんからの質問

エクステンションについて。長いものと短いものがありますが、どのようにチョイスすれば良いのでしょうか。

Aエクステンションとは、マストの足りない長さを補填するためのジョイントエクステンションのことでしょうか。だとするならそれは(メーカーによって異なりますが)30から36センチ程度伸ばせるショートなものと、40から46センチ程度伸ばせるロングな2つのタイプがあります。その選択は通常、自分の使うセイルが必要とするエクステンション寸法によって決まります。

例えば使うセイルのラフサイズが436センチだったとして、430センチのマストを使うとした場合、必要なエクステンションの「上げ寸法」は6センチ。それに対して長いタイプは必要なく短いタイプで十分に足りるので、この場合は短いタイプを選ぶことになります。もちろん長いタイプでも対応できますが(大は小を兼ねるから)、不必要に長過ぎるものは選ばないのが一般的。

その理由として(上記の場合)もし46センチまで伸ばせるロングタイプを使ったとしたら、単純計算で40センチも余計にマスト内に収まることになり、その40センチの部分はマストとエクステンションが重なり合っているため、マスト本来のベントカーブと呼ばれるマストの「曲がり加減」に影響がおよび、本来発揮されるべきマストの性能が阻害されることが考えられるから。長くマスト内に挿入されていることでその重なった部分が「硬く」なって、それがマストの性能を低下させるかもしれないという懸念です。これはとても些細なことですが、上級者であるほど気にするところ。簡単に言うなら、不必要に長すぎるエクステンションは「あまり芳しくないね」ということです。

また、もうひとつの例として、同じくラフサイズが436センチで、それに400センチのマストを使う場合。このとき上げ寸法は36センチが必要となります。だとすると最長36センチまで伸ばせる短いタイプでも対応可能なわけですが、その場合はmaxまで伸ばすことになり、マストに挿入される部分(マストが止まるリングから上のパイプ長さ)は最短となります。すなわちエクステンションは最も短くマスト内に挿入されているということ。これもまた不安。マストの中にちょっとだけ入っているよりも、長過ぎない範囲でそこそこの長さが挿入されていた方が丈夫そうだ、と多くの人が気付きます。もちろんエクステンションは最も伸ばした状態でも強度的に何等問題無く作られているのですが、そうわかっていても、なんとなくイメージとしては、挿入部がもうちょっと長く入ってた方が安心そうだ、と思う人は少なくありません。

これらのことから結論として、もし質問者が短いエクステンションで十分対応可能ならばそれを。短いのだと最長に伸ばさなければならない、もしくはそもそも短いのでは長さが足りないのであれば長いものを選ぶ、ということになります。

以下は余談として。エクステンションにはアルミ素材のものとカーボン素材のものがあります。両者には、価格的にはアルミの方が安価で、性能的にはカーボンの方が優れているという違いがあります。そもそもエクステンションの上に繋がるマストはカーボン。だからエクステンションもカーボンの方が、素材的な特性(曲がり加減など)が合致するため高性能というのがカーボン・エクステンションの存在意義。

しかし反面でアルミの方が丈夫というのも事実。特に30センチ以上伸ばす場合。例えばセイルアップの場面、板のデッキとレイルの境目にマストか、エクステンションか、いずれかが当たります。エクステンションが短いならばそこにはマストが当たるでしょう。でも長くエクステンションを伸ばしていたならエクステンションが当たることになります。これが大いなる懸念になります。

マストに対してエクステンションは、マストの中に挿入されるゆえに細く、しかも長さを調節するための穴や溝がある。ということはマストよりも強度的に弱いと言えます。ピンポイントのダメージがマストにかかっても大丈夫で、さらにその部分がマスト内部にエクステンションが挿入されている箇所ならマストとエクステンションの2枚重ねだから尚更強い。でもそのピンポイント箇所がエクステンションに当たるとしたら、それは三択の中で一番ヤバそうだと気付くでしょう。

個人的な経験ですが、私はこれまでカーボンエクステンションを数回折って大変な目に合ったことがあります。それはセイルアップではなく、波で板が「煽られた状態」で。オフショアで沖のポイントブレイクの波を攻めていて、巻かれたわけでもないのに沈して波で板がちょっとぶつかっただけなのにカーボンエクステンションが真っ二つ。それはもう青ざめた経験でした。波で板が煽られるとデッキとレイルの境目と、マストもしくはエクステンションが瞬間、激しくぶつかります。たった1回のその瞬間の力でカーボンエクステンションがどれほど簡単に「折れて」しまったことか!

対してアルミは折れることはありません。ダメージを受けても何ともないか、最悪でも「ちょっと曲がる」だけ。折れたらその後のセイリングは不可能ですが、曲がるだけなら乗れる、という大いなるリスクの違いがそこにあります。

そうした経験も踏まえて、ウェイブはもちろんのこと(ウェイブでカーボンを使う人はたぶん相当な少数派。理由は上記した「折れる」というリスクを嫌って)、また、頻繁にセイルアップをするかもしれないレベルの人にはアルミのエクステンションをお勧めします。ちなみに私は、性能重視のスラロームでもアルミを使っています。性能的にはカーボンに一理有りなのは重々承知していますが、実際のところスラロームでアルミを使って「こりゃ遅くでダメだ」と感じたことがまったく無いので、リスクの回避を重視しての「アルミ」という選択です。